日本は豊かな国だと信じる人の「大いなる誤解」 日本型経営は数字を見ず合理的経営ができない

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上野:言わせてください。女性にとっては、労働状況は変わっていないどころか悪化しています。

出口:その通りです。121位ショックが象徴的ですが、女性の地位は下がってきています。

上野:私と出口さんの共通認識は働き方が変わらなくては、働き方を変えなくては、です。出口さんはかねてから、新卒一括採用、終身雇用制、年功序列給、定年制をやめることを提言しておられます。

日本型経営は人口増と高度成長なしに成り立たない

出口:このワンセットの労働慣行が日本型経営を支えたと認識しています。しかしこのガラパゴス的な慣行は、人口の増加と高度成長という2つの前提条件が揃わないと成り立たない仕組みでもあるのです。

上野:私はこれにもう1つ加えたい。企業内労働組合です。労働者を守るべき組合がそれぞれの企業内で組織されたことから、企業との共存共栄で生き残ってきました。労働者の味方というよりも企業の共犯者です。

出口:日本生命に入社した頃に、酒の席では、労働組合のことを考えすぎる会社と、会社以上に会社の経営を考えすぎる労働組合が団体交渉をしているのは、何か変ではないかとよく話していました。

上野:労働組合のリーダー経験者は企業の出世コースでしたね。人事管理が得意ですから、経営者に向いています。

出口:そういう面が間違いなくありますね。日本生命でも組合の幹部は出世コースです。

上野:労働組合はフェミニズムの敵でもありました。日本型経営は女性の犠牲のもとに成り立っていたと、ジェンダー研究では結論が出ています。女性を構造的・組織的に排除する効果があるからです。

労働組合は、人口が増えていた時期に失業率を抑えて、完全雇用に近い状態を達成したと言いますが、それができたのは、女を労働市場から排除したからです。女が労働市場から排除されていなければ、失業率はもっと高かったでしょう。

長時間労働や年功序列などの日本型雇用慣行がやめられないのは、過去に成功体験があるからだとおっしゃる人が多いのです。だからその頃と同じことを続けていると。
でも、本当にそうなんでしょうか? それだって誰にとっての成功だったのか。女性にとっては抑圧だったのかもしれません。

出口:成功体験だったかどうかは別として、人間は一度考えの枠組みができてしまうと、なかなか変えられないということだと思います。

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