「日本株は1ドル=90円台突入で急落」は正しいか 「ドル安円高論」と日米企業の業績を検証する
こうした日米の中央銀行に対する市場の期待の差が大きい、ということからは「アメリカでは一段の緩和で株価が支えられそうだが、日本はそれは期待しがたい。しかも日米の追加緩和の差からはドル安円高が進む」という事態が推察できる。
だが、もしそうした為替相場の動きが生じるとしても1ドル=100円あたりまでであって、その水準を深く割り込むドル安円高とはなりにくいだろう。
というのは、シカゴ市場のドル円先物のポジション(商業筋、すなわち顧客からの注文に応じて相場観ではなくリスク回避のため先物を売買する銀行を除き、為替の相場観を中心に先物を売買する、いわゆる非商業筋)をみると、2020年3月半ばから円の買い越し超(円の買い残が売り残より多い)となっている。つまり、すでに投資家は先物で円を買ってしまった(過去形)という状況だ。
現在と似たような買い越し超の幅になった局面を過去に探すと、2016年半ばが相当する。このときは、円買いを積み上げた投資家が反対売買(円売り)に転じ、一時100円割れだったドル円相場は逆に115円を超えるまでの円安となった。
「ドル安」でも日本株は今後も堅調?
このように、筆者はドルが100円を大きく割れる公算は小さく、中長期的には円安方向へ反転していくと見込む。ただしその前にいったん100円近辺までの円高・ドル安はありうる、と考えているわけだ。
それに比して日本株は、このところすでにドル安円高気味に推移しているなかにおいて、高値を維持している。
過去は「円高恐怖症」とも言える日本株の動きがあったのに対し、最近のドル円相場と日本株における関係変化の背景には、何があるのだろうか。ひとつには他通貨との関係が挙げられる。確かにドルは対円で下落気味に推移しているが、先進国通貨でもたとえばユーロは対円で上昇方向であるなど、全面的な円高とは言いがたい状況だ。
また、日本企業はグローバル展開するにあたって、原材料や部品などを現地調達するなど、円相場の変動が収益に与える影響を抑えるような努力を長期間続けてきた。
その点では、かつての「円高恐怖症」が行きすぎで、現状のような為替と株価の関係が「正常」になった、という解釈もできる。
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