他人のモノが欲しくなる!?物欲刺激SNSの驚き

モノ情報サイト「Sumally」が狙う、新コマース戦略

百科事典の発想からはじまった、「物欲刺激SNS」

山本氏と日下部氏(左から)。Sumallyにはエンジニアやデータアナリスト、デザイナーも勤めている

:まず、山本さんは経歴が変わっていますよね。

山本:電通から雑誌『GQ JAPAN』などを発行するコンデナスト・ジャパンに転職してSumallyを立ち上げたから、今のところいちばん長く続けたのが小学校でした(笑)。

日下部:でも、フジロックはもっと長く通っていますよね。

山本:そうだ。14年くらいは通っています。

:いちばん長く続いているのがフジロックって面白いですね(笑)。

山本:雑誌の仕事も楽しかったし、いろんな場所に行って、いろんな人に会える編集者は性に合っていましたけど、「この祭りは30年続かない」という思いもあって。市場規模が縮小していましたから。そんなときに思いついたのがSumallyだったんです。

:Sumallyはアイテムへのhaveとwantでつながるコミュニケーションが魅力のサービスですが、そこにsellとbuyが加わり、C2Cの取引が可能になりました。コマースの戦略について細かく伺う前に、なぜSumallyを作ったのか教えてください。

山本:僕自身がモノを好きだったからですね。ずっと思っていたんですけど、NIKEが今までリリースした全部のモデルを見られる場所ってパブリックにはありませんよね。これはNIKEに限らず、adidasもそうだし、カメラもそうだし、鞄もそうです。そう考えると、世の中にあるあらゆるものは、まったく整理されていない状態です。人間が作ったものを整理するのも人間の仕事だろう、と思ったのが第一のステップ。

:百科事典のような?

山本:そうです。ただ、2010年代の百科事典を作ろうと考えたときに、アイテムの写真があって、それがどういうモノなのかという情報はもちろんのこと、誰が持っていて、誰がほしいと思っているのか。そして誰が売っているのかという情報を含めてアーカイブするのが、そのアイテムをアイデンティファイするのに重要だと思いました。

:「この人は、こんなアイテムを持っているんだ」とチェックしたり、モノを通して交流したりといった、SNSとしての楽しみ方もありますよね。

山本:Facebookも名鑑(book)という名前がついていますが、人の顔と名前、プロフィールが並んでいる以上に面白いのは、やはりその上で起きるコミュニケーションですよね。フォローしているユーザーのアイテムをたどり、さらにそのアイテムをwant / haveしているユーザーを見つけ、また新たな気になるアイテムをたどり……と、やっているうちにすぐ時間が経ってしまいます。僕は「物欲刺激SNS」と名付けています。

日下部:SNSの機能によって、「好きだけど知らないもの」を見つけられるようになりました。センスに共感する人のwant / haveからアイテムを発見するのはもちろん、want / haveのデータベースから高精度の関連アイテムを提示することもできます。

:want / haveにひもづいた今までにないソーシャルグラフによって、新しい“モノとの出会い”が可能になったということですね。参考にしたサービスはありますか?

山本:参考というか……。すごいなと思ったのは、やっぱりAmazonです。

:どういうところが?

山本:普通のコマースの仕組みは、”list to sell”なんですね。つまり、当たり前ですけど、売り手が持っているものを並べている構造になっている。それに対して、Amazonは”sell and buy on list”。すべての商品を並べて、かつほかの人もそこで商品を売れる仕組みを作った。そうなるとルールが変わってきて、人がリスト上で売買する構造になります。これは売り手にとっても、買い手にとっても優れたシステムだと思っています。もし、絶版になった本を買わなければいけないとして、Amazonのマーケットプレースでは1200円、ヤフオクでは800円だったとしたら、嶋さんならどちらで購入しますか?

:う~ん。どっちだろう。気分によるかも。

山本:そうですか(笑)。でも、学生に聞いてみると約8割がAmazonで買うと言うんです。これは、Amazonのほうが購入に手間がかからないということもあると思いますが、そもそもAmazonのほうが商品を探しやすいということも大きいと思うんですよ。リスト上になっているからリーチしやすいのです。「Amazonに行けば、だいたいのものはあるだろう」と思われやすい。Amazonは本とCDの分野でそれを実現しました。Sumallyはsumとallをつなげた「すべてを積み上げる」という意味の造語です。いずれ、すべての商品をAmazonの本やCDと同じようにしたいと思います。

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