元野球選手「ウーバー配達員」経て見つけた天職 後輩のために現役引退後の道しるべを作る

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「人と会うことは自分にとってプラスでしかないです。新しいスタートを切るにあたって、最初はいろいろな人に助けてもらうことになると思っていました。その際にヘンなプライドを持っているとせっかくの出会いのチャンスも逃してしまうし、自分にとってはマイナスのことばかりとなってしまうと思うんです。

トライアウト後、NPBの球団から連絡はなかった。いらない早くプライドは捨てて一から動くことを決意した(写真:TBSテレビ)

いつまでもプロ野球選手だった頃のように、周りもチヤホヤしてくれない。そんなことは当然のことだと思っていました。だから、いらないプライドは早く捨てて一から動く。働くというのはそういうことだと思っていましたから」

当初のもくろみでは「アパレル会社を経営しよう」と準備を進めていた。しかし、海外との折衝が本格化する直前に、未曽有のコロナ禍に見舞われ、すべての計画が中断されることになった。幸いだったのは本契約前で金銭的な被害がほとんどなかったことだった。

「金銭的なダメージがなかったのはよかったんですけど、コロナで完全に計画がストップしてしまって、ダラダラ過ごす一日が増えてしまいました。そこで『人に迷惑をかけずに、人に役立つことはできないか?』ということを考えました。思いついたのがウーバーイーツだったんです」

家でじっとしていても何も始まらない。そこで友永が考えたのが「ウーバーイーツで働き、そこで得た収入を全額寄付しよう」というアイデアだ。

何とかしてみんなの役に立ちたい

そこからの行動は早かった。すぐに準備を整えてウーバーイーツで働くことを決めた。2020年4月4日に投稿された彼のツイートには、次のように書かれている。

「人生経験として1カ月限定空いてる時間を使ってでウーバーイーツドライバーをしてみることにしました。家で外出出来ない事が多いと思います! 美味しいご飯を友永が届けますよー!」(原文ママ)

どんな思いで友永はアクションを起こしたのか? どんな考えで、自らの考えをSNSで発信すると決めたのか? 当時の心境を尋ねると笑顔が弾ける。

「あの頃は、『何とかしてみんなの役に立ちたい』という思いだけだった気がします。SNSで発信したのも『みんなに元気を与えたい』という思いでした。僕が発信することで、誰かが勇気をもらったり、誰かが元気になったり、そういうことって絶対にあると思うんです」

元プロ野球選手の突然の行動にファンたちは驚いた。友永のツイッター上には「感動しました」「頑張ってください」という文言が躍った。同じくウーバーイーツで働く人々から「お互いに頑張りましょう」というメッセージもあった。配達先では2回ほど「友永さんですね」と声をかけられた。

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