日本で「ナイキ動画」批判された当たり前の理由 日本に人種差別はないという人に伝えたいこと

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しかし、ナイキはその批判にもかかわらず、これまで多くの社会的善行、あるいは少なくとも社会的善行に見える行為に従事してきた。少なくともアメリカで法律によって定められている企業の社会的責任(CSR)の基準を超えるほどに。いくつかの企業は、生態学的および社会的見地からその企業と環境を維持しているコミュニティに対する責任感を示すことでよく知られているが、これをコーポレートシチズンシップと呼ぶ人もいる。

このCMで起こって欲しいと私が願っている議論がある。覆い隠された問題を明らかにした海外企業を攻撃するのではなく、世界中の顧客(数百万人の非日本人、異なる人種の両親をもつ人々、多文化背景をもつ日本人で、日本を故郷と呼ぶ人たちなど)から愛され、利益をえているような日本企業が、こういう問題提起においてどのような役割を果たすか話し合うことである。

議論に参加した場合、ナイキと同じように「口出しすべきではない」「自分たちの専門に集中すべき」と言う人もいるだろう。そして、こうした社会的問題は「専門家に任せろ」と言うのである。

ナイキのような企業は「孤立」しない

しかし、考えてみて欲しい。前回私がYouTubeでこのCMを見たときは、すでに3万以上のディスライクと、何千もの否定的なコメントが集まっていた。つまり、ナイキは痛いところを突いたのだ。ナイキは成功したのだ。

このことは、さらにCMと企業アクティビズムが必要なことを示している。多くの人がいじめや人種差別の事例をもっと目にするようになるほど、もっと力のある人々や、政府でさえも問題を認識してその解決に乗り出すのではないか。

個人的には、企業の社会的責任を実行する企業は、より幅広い社会問題に関心を持っており、ただ利益への影響に興味があるだけではないと信じている。もっと多くの日本企業がこのトレンドに続くのであれば、同じ価値観を持つ顧客を引き付けるだろう。これは多くの顧客にアピールできるだけでなく、持続する価値でもある。

もちろん、ナイキの広告のように、この価値を共有ぜず、ナイキやどの企業もいじめやレイシズム、女性やLBGTQI、年齢や障害への差別について声を上げるべきではない、という考えの人はこうした動きに反発を示すだろう。だが、それは仕方がない。企業が企業として、(収益を上げることは別として)何を支持するかを決断し、そのスタンスはどのようなものかを顧客に明確に示すことは重要なことだ。

何かを支持している企業は、けっして孤立しないだろう。しかし何事も支持しない企業は、何も支持しない人々と同じで、どんなことにも騙されてしまうだろう。

バイエ・マクニール 作家

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Baye McNeil

2004年来日。作家として日本での生活に関して2作品上梓したほか、ジャパン・タイムズ紙のコラムニストとして、日本に住むアフリカ系の人々の生活について執筆。また、日本における人種や多様化問題についての講演やワークショップも行っている。ジャズと映画、そしてラーメンをこよなく愛する。現在、第1作を翻訳中。

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