リンゴの皮むく鉄腕アトム 安川電機“ロボット社長”の夢

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ロボットを人間のサイズに近づけ、腕の関節を6軸から7軸に増やすことで、省スペース化を実現。わざわざ製造ラインをロボット導入用に改造する手間をなくし、客先の導入コストを抑える。「トヨタには、手作業が当たり前のエンジンラインで組み立て用ロボットを提案しようと計画中」(利島)という。産業用ロボットは自動車向けにとどまらない。現在はデジタルカメラのセル生産を担う産業用ロボットも試験中だ。

「御用聞き」を裏打ち 炭鉱・鉄鋼で鍛えた力

もちろん、「御用聞き」だけで世界一になれるほど世間は甘くはない。戦前から培ってきた技術開発力というバックボーンがあってこそ。石炭採掘用の大型モーターで1915年に起業。八幡製鉄所ができると鉄鋼製造用モーターを手掛けた。

58年には世界に先駆けてサーボモーターを開発・製造。高速制御が可能なサーボモーターはロボットの重要な機構部品で、開発した当初は現在のライバルである三菱電機にOEM供給していたほどだ。トランペットを吹くことで話題になった「トヨタ・パートナーロボット」では全量が安川製のサーボモーターを採用している。このサーボモーターでも現在世界首位に君臨している。

サーボモーターを制御するインバーターも、安川は世界一。日米欧ア、各地域で満遍なくシェアを取りながら、トップの座を不動のものにする(右グラフ)。 

IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)という新型の半導体素子が開発されると、いち早くインバーターに搭載した。IGBTの適用で他社に先んじた安川のインバーターは、モーター制御の際に生じるノイズの少なさが最大のウリ。ここ5~6年に竣工した首都圏の高層ビルの2棟に1棟には、安川製のインバーターが入っている。たとえば、六本木ヒルズの空調制御システムは全量が安川製だ。福岡ドームでは40台強のモーターをインバーターで同期させることで、ドームの開閉を容易にしている。

サーボモーター、インバーター、ロボットを軸に業績は順調。売上高4000億円、営業利益率10%台に手が届きつつある(右グラフ)。ただ、40%近い営業利益率を誇る最強のライバル、ファナックの足元には到底及ばない。その理由の一つともいえるのが、安川が民生用ロボットなど次世代をにらんだ研究開発投資に積極的なことである。 

「少なく見積もっても産業用ロボットの数十倍は市場がある」。民生用ロボットに話が及ぶと、利島は顔をほころばせる。搬送案内ロボット「ロボポーター」は、北九州空港で目下実証実験中。下肢運動療法装置「TEM LX2」は医療の現場でリハビリ用としてすでに実用化されている。 

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