"通過するだけ"は惜しい、滋賀ご当地鉄道事情 琵琶湖を囲む主要路線、地元密着ローカル線も

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ちなみに、西武グループの創業者・堤康次郎は近江鉄道沿線の生まれ。いま、近江鉄道が西武鉄道グループに属しているのも、そうした縁によるものだ。走っているのはかつて西武線で活躍した懐かしい電車たちである。

信楽駅前にはおなじみの信楽焼の巨大たぬきが鎮座する(筆者撮影)

信楽高原鉄道は貴生川からタヌキの里、信楽焼の信楽までを結ぶ旧国鉄の第三セクターだ(信楽焼のタヌキは昭和天皇の行幸にあわせてにぎやかにみえるように沿道に並べたことで有名になったらしい)。

1991年の列車衝突事故の後も度重なる自然災害で苦しい状況ではあるが、2019年には朝の連続テレビ小説『スカーレット』の舞台になって観光客が集まった。1990年代、『Age,35 恋しくて』というテレビドラマで椎名桔平との不倫現場を夫の中井貴一に押さえられた田中美佐子が、「いつからなんだ?」と聞かれて「きっと生まれる前から」と答えたのも信楽であった。

滋賀の鉄道は奥が深い

一方、京阪石山坂本線は併用軌道も一部ある路面電車風情の小さな電車で、比叡山の玄関口・坂本から紫式部ゆかりの石山寺までを結ぶ。

大津市内を走る京阪石山坂本線。市の中心部を通る(筆者撮影)

京阪京津線と接続するびわ湖浜大津周辺はすぐ隣に琵琶湖が広がる古くからの大津の町の中心地。1882年に長浜―大津間に日本で初めての鉄道連絡船が通ったが、その大津方の港がびわ湖浜大津付近であった。

なお、この鉄道連絡船は東海道本線の関ケ原―米原―馬場(現・膳所)間が通るまでは、東海道大動脈の一部をも担っている。滋賀県のシンボル・琵琶湖は、のちに青函や宇高で活躍する鉄道連絡船のルーツでもあるというわけだ。

滋賀の鉄道の旅は、新幹線で通り抜けるだけなら瞬く間。だがその途中や湖東のローカル私鉄などに乗ると意外に奥深い楽しみがある。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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