ゴア元米副大統領の「二面性」とは? 田坂広志 多摩大学大学院教授に聞く(3)

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言うまでもなく、レーガンは、映画俳優の出身です。テレビ討論のこの劣勢の場面において、「政策論」で反論する前に、瞬時に、この「好人物」を演じ、自らへの「追い風」を作ったのでしょう。
 後に、レーガンは、「何があっても傷つかない」という意味で、「テフロン大統領」と評されましたが、彼は、論争においても、論理を超えた世界での勝負があることを、深く理解していました。そして、その勝負に勝つための技術、すなわち、「演技力」を持っていたのです。

――さすが、レーガンは、役者ですね。

そうです。そして、アル・ゴアも、その意味において、「役者」です。
 彼は、地球温暖化のスピーチにおいて、冷静に、「情熱的なメッセージを語る人物」を演じています。
 その彼の中には、「情熱的に語る人物」と、それを「冷静に見ている人物」という、一見、矛盾する「二つの人格」が、同居しています。
 そして、聴衆もまた、アル・ゴアの中に、その二つの「対極的な人格」があることを心の深くで感じ、それゆえにこそ、彼を信頼しているのです。

「親しみやすさ」と「したたかさ」の同居

―― 一人の人物の中に、「対極的な人格」があるから、聴衆が信頼するのですか?

ええ、一人の人間の中に、一見、矛盾する二つの人格が同居しており、その二つの「対極的な人格」があるからこそ、人々は、その人物を信頼するのですね。

こう述べると、意外に思われるかもしれませんが、しかし、それが真実です。
 特に、ダボス会議に集まる世界のトップリーダー達は、そうした視点で、国家リーダーを値踏みし、品定めしています。

情熱と冷静の同居。
 理想主義と現実主義の同居。
 慎重さと大胆さの同居。
 優しさと厳しさの同居。

国家リーダーたるもの、そうした「矛盾する二つの人格」を持ち、その二つのバランスを取りながら、目の前の現実に対処していかなければならないからです。

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