ゴア元米副大統領の「二面性」とは? 田坂広志 多摩大学大学院教授に聞く(3)

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――それは、どのような特徴でしょうか?

エンディングに向かって、いつも、熱くなっていくのです。

例えば、地球温暖化の進行とその問題の深刻さを、客観的データを示しながら語った後、エンディングに向かって彼は、こう熱く語るのです。

「もう、我々に残されている時間は、長くはないのです!」

その危機感に溢れ、訴えるような彼の熱いメッセージに、思わず、それを聴いている人々も、その思いに共感し、主旨に賛同し、その場には、しばしば感動の波が生まれてきます。
 しかし、その彼のスピーチに、私も一人の聴衆として共感し、賛同し、感動しながらも、一方で、もう一人の自分が、彼のスピーチを見ながら、こう感じているのです。

彼の情熱的なメッセージは、素晴らしい。
 しかし、実は、アル・ゴアは、冷静に、
 この「情熱的なメッセージを語る人物」を演じている・・・。

「情熱」と「冷静」の二面性

――それは、意外な見方ですね・・・

たしかに、こう述べると、意外に思われるかもしれないですが、実は、それが真実なのです。いや、アル・ゴアだけでなく、優れたプロフェッショナルの話者は、必ずと言って良いほど、その「二面性」を持っています。

情熱的に思いを込めてメッセージを語る自分。
 その自分を、冷静に見つめ、演じている自分。

優れた話者は、必ず、その「二面性」を持っています。
 それは、優れた舞台役者や映画俳優も、同じです。
 プロフェッショナルの役者や俳優も、同じことを語ります。

「舞台の上で、一人の人物になり切って、ある情感を表現する」
 「同時に、その自分を醒めて見ている、もう一人の自分がいる」

ときに、熟練の役者や俳優は、こう付け加えるときさえあります。

「その二人の自分を、さらに遠くから見ている自分がいると、最高の状態だ」

さすがに、そこまで円熟の境地にならなくとも、「冷静に自分を見ている、もう一人の自分がいる」ということは、優れた話者となるための、一つの条件でしょう。

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