NiziUをゴリ押しと言う人が的外れでしかない訳 最速「紅白」、冠番組、CM出演の快進撃は必然

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もう1つビジネス的な観点から、NiziUが「ゴリ押し」と言われやすい理由を挙げていきましょう。

プロダクトアウトとマーケットインという言葉を知っているでしょうか。これはマーケティングの基礎的な用語で、プロダクトアウトは「生産側がいいと思うものを作って売る」「質の高いものを作れば売れる」という戦略であり、マーケットインは「購入側のニーズがあるものを作って売る」「売れそうなものだけを作って売る」という戦略。

商品を企画・開発・生産する上で、どちらの考え方で進めたほうがいいのか。それぞれに長所と短所があり、正解はありません。実際にプロダクトアウトは、「独自性の高い商品が生まれやすい」「うまくいけば爆発的に売れる」という長所がある反面、「消費者に商品を理解してもらいにくい」「大失敗に終わるリスクがある」という短所があります。また、思っていたものが作れたとしても売れるかどうかは別問題であり、売るための工夫が必要です。

一方、ニーズを踏まえて作るマーケットインは、「一定数は売れる」「失敗しづらい」という長所がある反面、「爆発力に欠ける」「新たなものが生まれにくい」という短所があり、各社が似たような商品を作るため市場が停滞し、売り上げが下がりがちです。

これを日本のガールズグループシーンに当てはめてみると、これまではAKB48や坂道グループを筆頭に「ニーズがありそうなグループを作る」というマーケットインの戦略が大半を占めてきました。だからアイドル好き以外の人々には、「似た印象のグループばかり」に見えやすくなっていたのです。

世界で勝負するための発想によるプロダクトアウト

その点、日本のソニーミュージックと韓国のJYPエンターテインメントの日韓合同プロジェクトで生まれたNiziUは、日本人のニーズを前提したマーケットインではなく、世界で勝負するために「歌、ダンス、人柄の質にこだわる」というプロダクトアウトの発想で作られたグループでした。プロジェクト立ち上げの時点で大きな差別化ができていたのです。

また、感心させられるのは前述した「思っていたものが作れたとしても売れるかどうかは別問題であり、売るための工夫が必要」というプロダクトアウトの課題をカバーできていたこと。人々は約1年かけてじっくり行われたオーディションを見ながら、「日本にこんなスキルを持つ少女たちがいたのか」「こんなに頑張ったから成長できたんだね」などの応援モードに入っていきました。プロジェクトを進めながらニーズを作り、デビュー前から売れる商品となっていたのです。

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