政府が「2030年ガソリン車禁止」を打ち出した訳 方針急転換でメーカーの戦略修正は必須に
一連の報道では「ガソリン車禁止」という表現が多いが、これはディーセル車を含む内燃機関車を指す可能性が高い。2020年9月にカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事の発言での「インターナルコンバッションエンジン(ICE:内燃機関)」を多くのメディアが日本語で「ガソリン車」と訳したからだ。
では、2018年の達成目標設定を、なぜ今になって規制化する必要があるのか。背景にあるのは、世界的なESG(環境、社会性、ガバナンス)投資の急激な拡大だ。
従来、多くの自動車開発者が描いてきたクルマの電動化の将来像は、ガソリン車やディーゼル車からHV、PHEV、EV……と、搭載する駆動用バッテリーの大きさが徐々に増えていき、最終的には長距離移動向けの究極の次世代車として、FCVに到達するというイメージを描いてきた。
日本政府が電動化対応をしてこなかった訳
その中で、EVの普及を前倒ししたのが、日産だ。2010年市場導入の「リーフ」は、自動車産業史において大手メーカーによる初めての大量生産型EVとなった。
また、フォルクスワーゲングループは、2016年に発表した中期経営計画「トゥギャザー・ストラテジー2025」で、大々的なEVシフトを掲げた。前年に発覚したディーゼル車制御装置の違法によって失墜したブランドイメージを、V字回復させるための事業戦略である。
このほか、世界各国の富裕層に対して、テスラがプレミアムEV市場を拡大していった。こうした各社の電動化戦略に対して、一喜一憂するような対応を日本政府はこれまでとってこなかった。
なぜならば、前述の自動車新時代戦略会議での議論でも、電動化の基盤となるHVの普及比率は、2017年時点で日本が31.6%と、アメリカの4.0%、ドイツの3.0%、フランスの4.8%、タイの2.7%、インドの0.03%と比べて圧倒的に高かったからだ。
ところが、この2年間ほどの間に、ESG投資という文脈で電動化に関する潮流が一気に変わり、そこに各国政府の施策として規制強化につながった。急激な市場変化について警戒する声もある。
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