大手鉄道会社「南海だけ」営業黒字、納得の理由 各社の配当予想は会社ごとに戦略の違いが出る
レジャー施設を運営する鉄道会社も多い。西武HDは西武園ゆうえんちや8月に閉園したとしまえんを抱えており、東武鉄道は東京スカイツリーを運営する。また、近鉄HDは志摩スペイン村を運営する。営業利益ではなく営業外損益の話となるが、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーを運営するオリエンタルランドは京成電鉄の持ち分法適用会社である。
南海はゴルフ場運営やボートレース施設の賃貸を行っているが、ほかの鉄道会社と比べるとレジャー業の比重は小さい。
海外旅行需要が消滅してしまった旅行業も鉄道会社と縁が深い。国内2位で近畿日本ツーリストやクラブツーリズムを運営するKNT-CTHDは近鉄グループHDの子会社。また、旅行業界大手で老舗の日本旅行はJR西日本の子会社だ。新聞広告を中心とした集客で急速に成長していた阪急交通社の「トラピックス」は阪急阪神HDの旅行事業を担う。これに対して、南海も旅行業を行う子会社があるが、全体に占める比重は小さい。
不動産は「泉北」買収も貢献
一方で、コロナの影響が比較的軽微な不動産事業は、南海がこれまで強化してきた事業だった。2009年度から2019年度の10年間で運輸業の売上高はの871億円から1009億円へと1.5倍に増えたが、不動産業の売上高は243億円から434億円へと8割近く増えた。
一時的な売り上げしか得られないマンション分譲だけでなく、安定的に収入が得られる不動産賃貸業にも力を入れた。2018年にはなんば駅に直結する高層ビル「なんばスカイオ」を開業したほか、2014年に泉北高速鉄道とともに取得した東大阪市と茨木市でトラックターミナルや流通倉庫などの不動産が収益に貢献しており、今春には新たなトラックターミナルも開業した。これらの賃貸収入も業績に大きく貢献している。
鉄道各社が発表した2020年度の業績予想を見ても、各社が軒並み営業赤字を予想する中、南海だけは45億円の営業黒字予想となっている。これもポートフォリオ構成の賜物だ。
西武HDや京成電鉄など、コロナ前から不動産賃貸業の強化を宣言する鉄道会社は少なくなかったが、売り上げの安定化を図るため、今後はこの動きに拍車がかかることになりそうだ。
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