大手鉄道会社「南海だけ」営業黒字、納得の理由 各社の配当予想は会社ごとに戦略の違いが出る
だがそれをほかの事業がカバーした。営業利益を事業別に見ると、運輸業は88億円の赤字だったが、不動産の営業利益は70億円の黒字だった。前期の75億円からは減らしたものの、運輸業のように赤字になることはなかった。ほかの事業についても流通業は21億円から7億円、レジャー・サービス業は16億円から6億円、建設業は5億円から3億円とそれぞれ利益を減らしたものの黒字は確保した。さらに連結調整が3億円のプラスとなり、トータルで営業黒字を維持することができた。
もちろん、ほかの鉄道会社も不動産業や流通業を営んでいる。では、他社と南海の違いは端的に言って何か。この点について同社に問い合わせたところ、「ホテル、流通、旅行の事業規模が比較的小さいことだ」(IR担当者)という回答があった。
ホテル・流通の比重が小さい
多くの鉄道会社が鉄道だけでなく、さまざまな事業を経営多角化戦略として展開している。ホテル、流通、旅行といった事業にも多くの鉄道会社が参入している。しかし、ホテルや旅行は鉄道以上に厳しい状況だ。
ホテルでいえば、西武ホールディングス(HD)は大手ホテルチェーンのプリンスホテルを傘下に持つ。東急は全国でホテル事業を展開しており、京王電鉄が運営する西新宿の京王プラザホテルは日本初の超高層ビルとして名高い。JR東日本は主要駅でホテルメトロポリタンやホテルメッツを展開し、相鉄HDや京浜急行電鉄は宿泊特化型ホテルを急速に出店中だ。
これらに比べると、南海のホテルは勝浦温泉の「中の島」くらいだ。なんば駅の真上にそびえ立つ大型ホテル「スイスホテル南海大阪」は直営ではなく賃貸物件である。そのため、西武HDをはじめ、ホテル業の比重が高い鉄道会社と比べ、南海は傷が浅くてすんだ。
流通は東武百貨店、阪急百貨店、小田急百貨店など、多くの私鉄が百貨店業を営むが、臨時休業や訪日客の免税売り上げの減少といった影響から売り上げを大きく減らしている。南海の流通業の主軸は大阪球場跡地を再開発したショッピングセンターの「なんばパークス」と「なんばCITY」である。ショッピングセンターは不動産業の性格が強く、テナントの固定賃料や歩合賃料が売り上げとなる。そのため百貨店を営む鉄道会社よりも営業収益が落ち込まなかったといえる。
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