薄まる国王の存在感、タイ情勢を覆う暗雲

次の焦点は、誰が暫定首相になるか

5月22日のクーデター後、首都バンコクをはじめとしたタイ国内は大きな騒乱もなく、平穏を保っている。クーデターを首謀したプラユット陸軍司令官(国家平和秩序評議会議長)はインラック前首相と反政府派のスティープ元副首相の双方のリーダーたちを一網打尽にしたものの、現在は釈放している。

2006年のクーデターで首相の座を追われたタクシン元首相が、現在まで続く国内対立の根源。同首相支持派と反支持派の対立を解消するという点では、06年のクーデターと同じ構図だ。反政府派はクーデターの実行を待っていたという声もある。

今後の問題は、次の暫定首相が誰になるかだ。プラユット司令官自身が就任するとの見方が強いが、「そうなれば、タクシン派が黙っていない。騒乱が再燃する可能性もある」と、タイ・コンケン大学客員教授として現地に滞在している、甲斐信好・拓殖大学教授は指摘する。

タクシン支持派が多い同国東北部には、農民を中心に100万を超える行動派がいるとされる。彼らの存在も不安材料のままだ。現在、軍はコメの買い上げ制度を実施し、農民の機嫌を取る一方、北部チェンマイやコンケンといったタクシン派の拠点を押さえるなど治安維持に努めている。

ただ、06年のクーデターと異なる点が気掛かりな要素だ。それは、タイ政治の要となるプミポン国王が高齢による健康不安を抱えていること。これもタイ情勢に暗雲を漂わせている。

(撮影:ロイター/アフロ =週刊東洋経済2014年6月7日号<2日発売>ニュース最前線より)

政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 育休世代 vs.専業主婦前提社会
  • 若者のための経済学
  • 最新の週刊東洋経済
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
-

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

ログインしてコメントを書く(400文字以内)
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
日産・西川社長辞任の衝撃<br>ルノーとの対立が再燃も

株価連動型報酬を不正に上乗せして受け取っていた西川社長が辞任を発表した。対ルノーの防波堤だった同氏の退場は、日産の独立性を揺るがしかねない。ゴーン時代の有力な後継者候補が去り人材難の日産。次期社長の人選が将来を決める。