美術品オークションが息を吹き返したワケ

資産効果による買い意欲の回復だけではなかった

個別事例で見ても、盛り上がりは顕著だ。たとえば、4月19日にシンワアートが主催した岩下記念館所蔵品のオークションでは、日本画家・杉山寧の大型絵画『瞳』が5000万~8000万円とされた想定価格を大きく超え、1億8000万円で落札された。

想定価格超えの意味

オークションにかけられる美術品には、競り参加者が落札額の目安にする「想定価格」が設定される。これは、オークション会社が専門家などと相談し、現在の相場からその美術品のおおよその価格レンジを仮定したもの。つまり、落札価格が想定価格を大きく上回るということは、競り参加者が市場の先行きを強気に見ている証左というわけだ。

オークショニアがテンポよく価格を読み上げていく

とはいえ、相場好転の要因が買い手側だけにあるのではないのが、オークションの面白いところ。実は、美術品を供給する売り手側にも変化が見られる。

「富裕層は、いい作品が出品されれば景気に関係なく買う。しかし、不景気だと売り手が『高く売れないのではないか』という不安を感じて、いい作品を出品することに後ろ向きになる」(清水氏)。こうした事情から、リーマンショック後は高値での取引が期待できる作品が市場に出回らなかった。

その風潮に変化が表れたのは、安倍晋三政権が発足した12年末だった。「アベノミクス、特にインフレ目標の導入によって、将来の値上がりへの期待から美術品購入の関心が高まった。これを察知した売り手からの出品も増え、好循環が生まれている」(石井取締役)。

高額消費と同様、アベノミクスで息を吹き返した美術品オークション市場。その勢いがどこまで持続するか。それもひとえにアベノミクスの持続力と連動している。

「週刊東洋経済」2014年6月7日号<6月2日発売>掲載の「価格を読む」を転載)

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