韓国「インフルワクチン大量死」デマの真相 韓国はいかにして国民の恐怖を抑えたのか
死者数が増え、国民の恐怖も増大——。新型コロナウイルスの感染が世界に広がる中、韓国はインフルエンザの予防接種プログラムを大幅に拡大し、対象者を数百万人単位で増やした。自国の医療体制が新型コロナとインフルエンザのワンツーパンチを食らわないようにするためだ。ところが、予防接種のキャンペーンが始まると、ワクチンを接種した人が死亡したとの報道が次々に現れる。
死因は予防接種と無関係。韓国の科学者はすぐにそうした結論に達したが、パニックを止めなければ、ワクチン全体への不信感が国民に広がる恐れがあった。
そこで、保健当局は攻めに出た。そして、その過程で韓国は、新型コロナワクチンの利用が近づく世界に1つの模範を示すことになった。
韓国の保健当局は国民とのコミュニケーションを強化。判明した事実についてはデータを開示し、予防接種キャンペーンを速やかに元に軌道に復帰させた。新型コロナを扱う専門家が反ワクチン運動の高まりに懸念を募らせる中での出来事だ。
「韓国はすべてを正しく行っている」と、ノースカロライナ大学公衆衛生大学院のノエル・ブリューワー教授(保健行動学)は評価する。「政府はデータを収集し、速やかに国民に情報を提供し、予防接種プログラムを守っている。このようにすれば、予防接種に必要な国民の信頼は保たれる」。
韓国が直面した「落とし穴」
今は誤情報が瞬く間に広がる時代だ。新型コロナのパンデミックはすでに混乱と不信の原因となっており、デマや不信感が世界のワクチン接種計画の妨げとなる恐れが出てきている。
長期かつ大規模に効果と安全性が実証されてきたインフルエンザワクチンが不安の対象となりうるのなら、これまでに存在しなかった新型コロナワクチンの大規模接種も当然、同じ問題に直面しうる。こうした潜在的な落とし穴が小さな規模で顕在化したのが、まさに韓国だった。
韓国の野心的なインフルエンザ予防接種キャンペーンが始まったのは9月8日と、例年より1カ月早かった。保健当局は3000万人にワクチンを接種する計画を発表。前年を1000万人上回る規模とした。しかし、作業を急ぐ中で問題が浮上した。