バイデン氏に世界各国が「お願い」し始めたこと サミットのような多国間連携が再び重みを持つ

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トランプ政権の「アメリカ・ファースト」、つまり「一方的外交主義」と「二国間主義」を採り、多国間主義を拒絶する方針によって、この4年間多くの多国間組織、機関、イニチアチブが、苦労してきたが、G20もその1つである。

しかし、ジョー・バイデン前副大統領が当選し、トニー・ブリンケン氏が新国務長官として加わることで、アメリカは多国間組織や機関との関係再構築を進め、同盟国やパートナー国との結びつきも再強化すると見込まれている。

ヨーロッパがバイデン政権に期待すること

その期待が最も高まっているのが、ヨーロッパである。フランスのジャン=イヴ・ル・ドリアン外務大臣とドイツのハイコ・マース外務大臣は、11月16日付ワシントン・ポストの「Joe Biden Can Make Trans-Atlantic Unity Possible(ジョー・バイデンが大西洋をまたいだ団結を可能に)」と題した論説記事で、以下のように語っている。

「ヨーロッパとアメリカは、パートナー関係を世界的激変に適応させ、両者間の絆の深さや共通の価値観、共通の利益に合わせて、大西洋を横断する『ニュー・ディール(新しい取り決め)』を結ぶ必要がある。(中略)いま危機に瀕しているのは、(中略)私たちの生活様式を維持し、個人の自由と集団的進歩を飽くことなく探求し続ける私たちの能力だ。これに関しては、アメリカとヨーロッパほど適切で、緊密で、自然なパートナーは存在しない」

この記事が掲載された4日後の11月20日、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長は、アメリカの外交問題評議会に対してスピーチし、その冒頭で大統領に当選したバイデン氏について「米欧関係が重要だと心から信じている人物」と称え、「いまの私たちには、ホワイトハウスに友人がいる」と満足げに話した。

フォン・デア・ライエン欧州委員長は、4つの分野に焦点を当てたアメリカとヨーロッパによる「新グローバル同盟」の構築を提案。その分野とは、(1)ワクチンの開発と供給を含む世界的パンデミックの克服、(2)ヨーロッパグリーンディールに基づいた天候と環境の保護、(3)「人間中心のAI」を含むデジタル経済とテクノロジーの管理および共有価値と民主主義を守るためのグローバルルールの共同策定、(4)「経済的競争相手であり制度的ライバル」として中国に対処するためのグローバルな貿易制度の改革を含む、国際的な機関とガバナンスの擁護と更新である。

また、フォン・デア・ライエン欧州委員長は、上記の4分野は「新たな大西洋間の課題」の「核」にすぎず、ほかにもアメリカとヨーロッパ間で互いに協力可能な課題も多いと繰り返し語った。

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