39歳コピーライターが「ゆるスポ」発案した経緯 子どもの障害発覚を機に仕事の在り方を改めた

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――それはなぜなんでしょう?

まわりの同期と比べると僕のコピーはもうショボくって。でも8つも入れるとなるとネタ切れになり入れざるをえなかった。しかしそれがいま、他分野の人とやっていると、これが自分の武器だというのがわかってきた。

──なるほど。お年寄りにスマホの扱い方を教えるだけで孫がヒーローになってしまう。そういう感覚に近いんですね。

そうそう(笑)。あと、苦手を知るのも大事で、「生まれ変わったら世界からいなくなってほしいもの3つ」というのもあげている。こちらは数が少ないのがポイントで、あえて言語化し「既得権益」のほうが「キャンプ」よりも上だなぁと比較したり、「蚊」と「偏見」だとどっちがより嫌いかというのを判断しています。

──比較の仕方が独特で斬新ですね。

アハハハ。何をもって自分が苦手かを分析しながら自分を編集していく。これをやることで「自分は何者?」かがクリアになります。

この企画書をどんどんアップデートすることで、いまは定点観測のポイントとしても使っていて。もしも1年前に作ったものと何も変わってないとしたら危機だと思うことにしています。

スポーツができない子を救いたい

──「世界ゆるスポーツ協会」のホームページを拝見すると動画などでオリジナルのスポーツが紹介してありますが、いちばん気になったのが「ボブイスレー」でした。目の見えない人とナビ役の見える人が2人1組となって対戦する。ボブスレーに似ていて速さを競うもので最初は足をバンバン踏み鳴らしている単純なゲームだと思ったんですが、ナビの伝え方と聞き取りが問われる。つまりコミュニケーション力を養うものなんですよね。

本の中で、ゆるスポーツを考える発端に子ども時代「運動オンチ」だったと書かれているのを読んで、わたしも体育の授業で「できない子」として放置されていたのを思い出しましたが、「ゆるスポーツ」はそういう子をすくい上げようとすることでもあるのかなぁと思いました。

おっしゃるとおりです。ボブイスレーは会話しないと始まらない。なおかつ相手が動きやすいように言葉を選ぶ努力をしたほうが勝つ。本来スポーツの醍醐味はコミュニケーション。チームメイトともそうだし敵とも、コーチと生徒という関係もそうだし。パスが通った、伝わったという瞬間が嬉しいんですよね。

さらに日常のコミュニケーションとは異なり、身体性がともなうので他者と一体化しやすい。本来は。でも日本の体育教育はある種、規格化されたものになり、そのためにノイズを排除してきた。ゆるスポーツはまさにそのノイズを拾い上げたかったんですよね。

――澤田さんがごく最近手がけた仕事の1つが大手アパレル百貨店と組んだネクタイづくりですね。

まず目の見えない人に「ブラインド書道」をやってもらって、そこでデザインしたものでネクタイをつくるということをやってみた。いまはネクタイをそんなに買わなくなってきているといわれるのを聞いて「ネクタイを買う理由をつくりませんか」と提案したのがきっかけです。その前にたまたま息子の盲学校で見えない子どもたちの書道を見ていて、それがすごい素敵だったんです。

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