東芝、リストラ進展でも見えぬ「次の成長柱」 監視対象に5事業、石炭火力発電からは撤退

拡大
縮小

仮にそうだとしても、売上高4兆円、利益率10%の目標達成のハードルは高い。東芝が2021年3月期に見込む業績は売上高が3.1兆円、営業利益率は3.6%にとどまる。目標達成の牽引役として打ち出したのが再生可能エネルギー関連事業へのシフトだ。

今回初めて示した計画によると、2020年3月期に1900億円の再エネ事業の売上高を、2026年3月期に3500億円、2031年3月期には6500億円に急拡大させる。成長のため、今後3年で過去3年間の5倍にあたる1600億円の資金を投じる。太陽光や水力、地熱、風力などの発電関連機器や、高圧変電機器や二次電池などエネルギー調整関連機器を組み合わせて、再エネ市場を開拓していく考えだ。

車谷社長は「東芝はメガソーラー設置シェアで国内首位。水力発電設備でも国内トップのほか、可変速揚水発電所では世界トップシェアだ。また地熱用の発電タービンでも世界トップクラス」と誇る。「今後は風力にも力を入れていく予定だ。最新鋭風車の国産化を計画している」と鼻息は荒い。

インフラやデータのサービス事業に軸足

ただ収益拡大は簡単ではない。それぞれトップシェアといっても、東芝の水力関連は売上高300億円規模、地熱も100億円規模とみられ、市場がそもそも小さい。世界の風力市場は欧米メジャーが席巻しているのが実情で、コスト競争力で劣る日本勢は、日立製作所が2019年に風車生産から撤退。三菱重工業も風車の製造をデンマークのヴェスタスに頼ってきた。

発電機器とともに、エネルギー調整分野のビジネス拡大も狙う。「2030年ごろから再エネで発電されたものの消費されない余剰電力が多く発生する。これらの余剰電力を調整するニーズが高まる」(車谷社長)として、これに対応した系統安定化やVPP(仮想発電所)関連ビジネスに本格参入する考えだ。

実際、東芝はこの分野で先行するドイツのVPP大手・ネクストクラフトベルケと共同で新会社を11月に設立。日本全国の再エネ事業者から電力を買い集めて卸売りする事業を開始する。発電量を予測したり、IT制御によって電力の安定供給を目指したサービスで稼ぐ狙いだ。

東芝は最近、これらインフラやデータなどサービス事業に軸足を置く方針を示している。機器納入後の保守やサービスは数十年と長期にわたり、利益率が高いからだ。従来の事業別セグメントを見直した新セグメントも今回の中間決算で示し、インフラサービス、インフラシステム、デバイスプロダクトに分割。この中で最大事業がインフラサービスで利益率は9%にのぼる。

この見直しは、業績が回復途上とはいえ3000円に届かない水準で低迷する株価と、それに苛立つ大株主(モノ言う株主)を意識しているからだ。かつての総花的経営からは脱しつつあるものの、いまだ事業領域がわかりにくいとの声が多く、成長領域がわかるように整理したという。

ただ、いくら見せ方を変えても実態を伴わなければ、モノ言う株主からの圧力は高まっていくだろう。車谷社長は「経営再建は40~50%ぐらいまで来ている」という。さらに、4月には東証2部から東証1部への復帰を申請しており、年明けにも1部復帰との観測も流れる。車谷社長は「(東証1部復帰が)ある種の復活のマイルストーン(節目)になり、改革に弾みがつく」と期待を膨らませるが、再び成長軌道に乗ることができるのか。東芝は正念場を迎えている。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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