さて平さん、東大を優秀な成績で卒業した後、角丸証券に入社した。一流のサラリーマンたらんためにまずすべきは、上司に自らの存在を認識してもらうこと。さすがに「社員身元調書に”屁道名人位を持つ”などと書けるわけでもなかったが、たちまち、調査部の知るところとなり」、入社間もなくして平さんとその屁道は全社員に知れ渡ってしまったのである。
会社で出している「社友」という雑誌で平さんがオナラ術を詳細に解説し、屁道大会を開こうと提案した」というのだから実に痛快だ。角丸証券というのはシャレの分かる素敵な会社だったのだろう。古本好きとしては、この角丸証券の社内報「社友」を何とか入手したいものだと常に念じ続けている次第。
仕事も職場もオナラのお蔭で円満快調、職場に笑いが絶えず、取引先ともオナラ談義から入れば「爆笑のうちにスムーズにすんでしまう。」という無責任男シリーズの植木等ばりの大活躍ぶりだったようである。
平さんは出世のほうも順調に
これだけの名手ゆえ、全国から弟子入り志願者も絶えず、段位を授けるようなことはせぬまでも、「同好の士を集めて、研究会を開き、妙音、妙技を競うなどは随時行って」おり、将来の夢は二つ、オナラ名人を集めて、全国コンクールを開催し、それをナマの音を入れて、全国中継したいというものと、屁音の録音を集め、一大ライブラリーを作りたいということ。どこまでも楽しくこの章は締めくくられている。
ただこの奇著が刊行された3年後の1968年、角丸証券は日本勧業銀行(現みずほ銀行)系の日本勧業証券と合併、日本勧業角丸証券となる。さらにみずほ銀行系列の完全子会社化の後、2013年1月、みずほ証券に吸収され、解散となってしまったのである。
平さんが、会社の有為転屁んに伴い、痛快な前半生同様の後半生を辿ることが出来たのか。シリたくもあり、シリたくもない。ただ調べてみたところ、広島に本社がある某衣料メーカーさんのHPに、屁道の平さんと同姓同名の方が、年代的には矛盾のないタイミングで会長職にあったことが記されている。二人の平さんが同一人物かどうかは分からない。が、痛快な屁道マスター平さんがこのような「転進」で成功を収めておられることを心から願わずにはおられないのである。
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