一方、来年バイデン氏が大統領に就任すれば、この法律はまた適用除外となる可能性が高い。
スペイン紙『エル・パイス』によると、キューバのミゲル・ディアス・カネル国家評議会議長が今回のアメリカ大統領選挙の結果についてこう語っている。「大統領選挙において、アメリカ国民は新しい方向を選択した。双方の見解の違いがある中で、(選挙によって)両国にとって建設的で、尊重されるべき関係が可能になると信じている」。
非常に控え目な性格だとされるカネル評議会議長は、今回バイデン氏が勝利確実となって内心ホッとしているに違いない。何しろ、トランプ大統領の制裁の影響で、キューバは孤立し、昨年だけを見ても経済的に50億ドルの損失を被り、食料を含め最低限の生活必需品を輸入するのに必要な20億ドルも容易に工面できない状態にある。
日常の生活に必要なパン、料理用オイル、小麦粉、鶏肉、卵などが完全に不足した状態にある。キューバの機関紙『グランマ』も新聞紙にする紙の不足で発行日とその部数を減らさねばならない状態になっている。
この先5か月後にキューバ国家評議会が開かれる予定になっている。バイデン氏が来年1月に大統領に就任すれば、キューバにとって明るい日差しを迎えるようになることに期待がもたれている。今回初めて評議会議長として会議を仕切ることになるカネル議長にとっても、それはカストロ兄弟の指導から離れて新しい道を歩む手助けになるかもしれない。
「Cubaではなく、Queueba」
今年は多くの国にとって厳しい年となったが、キューバもその限りではない。上述の通り、新型コロナによって観光業が大きく落ち込んだことなどから、中南米に特化したシンクタンク、グローバル・アメリカンズによると、キューバの2020年のGDPは前年比6%減と見通しだ(2019年は前年比0.5%増、2018年は同2.2%増)。
スーパーの陳列棚が空っぽなうえ、配給待ちの長い列をみて、イギリスの『エコノミスト』誌はキューバの現状を「Cuba」ではなく「Queueba(queueは列の意味)」と表現している。上記の通り、キューバの年間の食料輸入額は約20億ドルに上る一方、外貨獲得の手段は医師団の海外派遣や観光業、海外に住む親族からの送金と限られている。
グローバル・アメリカンズによると、かつてキューバを支援していたベネズエラの経済状況が悪化して以来、キューバにとってはアメリカ観光客の存在は重要で、オバマ大統領によるアメリカとの国交再開によって2018年の観光収入は320億ドルに上ったという。
新型コロナに加えて、このままトランプ政権が続くことは、経済的にも人権保護的な意味でもキューバとしては最も避けたい事態だろう。トランプ大統領は依然、選挙で不正があったと法廷闘争も辞さない構えだが、来年1月20日にはバイデン政権が誕生するというのが大方の見方だ。このとき、キューバ人は再び美酒に酔えるのかもしれない。
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