出生前診断の是非について論じるページに、本音をむき出しにして論議を求める印象的な表現があるので引用したい。
1990年代後半の当時、個人サイトは「誰でもどこでも全世界に向けて好きなことを発信できる」画期的な趣味としてもてはやされていた。轟木さんのこのサイトはその最たるものだと思う。身体の状態も問わず、時代も問わず、今も世界に向けて発信している。
轟木さんの生年や病気の進行、あるいはテクノロジーの進化のタイミングがわずかにずれていたら、おそらくこのサイトは存在していない。同じく、新しい機械に興味を持ち、積極的に交流する轟木さんの性格と、呼応して協力する周囲の人々がいなくても存在していないだろう。だから、いまこうして読めることは「とてつもなく希少な結果」だと感じる。
「時代を問わず」発信できている背景
このサイトが「時代を問わず」発信できている背景をもう一段掘り下げたい。
管理人が亡くなったサイトは放置されることがしばしばある。家族や周囲の人がサイトの存在に気づかなかったり、気づいてもログイン情報がわからないなどの理由で手出しできなくなったりするのが理由だ。そこから忘れられた存在になったり、ときには荒らされたりもする。
轟木さんのサイトはそうはならなかった。亡くなった直後、家族や周囲の人と話し合い、主治医だった福永医師が著作権を継承。トップページに訃報を載せた以外は手を加えず、静かにサイトを守り続けた。福永医師は「筋ジス病棟の医師としても、轟木君のこのサイトをそのまま失うのは惜しいと思いました。何としても残したいという思いは皆で一致していたと思います」と当時を振り返る。
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