サイゼリヤで「星付き料理人」がバイトする理由 社会人がMBA代わりにバイトするときの鉄則
僕もサイゼリヤには学びに来ているので、星付きシェフ村山太一のスイッチは完全にオフにしています。サイゼリヤの仕組みを肌でも頭でも吸収しなきゃならないので、「俺だったら~」なんて余計な考えが入り込む隙はありません。そんなことを考えている時間があるんだったら、お客様を満足させることに没頭したほうがいい。
それでも、仕事が終わって「今日は大変だったな」と振り返っているときに、「あのやり方はすごかったな」「ああいう場面では、もっといい方法があるかもしれない」と気づいたことが次々に出てきます。それを自分の本業で生かせれば上出来です。
飲食店や接客業では、たいていどこでもマニュアルがあります。口角を上げる角度まで決まっていて、目尻を下げる笑いをしなきゃいけないとか、相手の目を一瞬見てニコっと笑って安心させるとか、いろいろと細かいことが書いてありますが、僕だったら誰よりも一生懸命にそれをやってみます。マニュアルと一体化するほど没入すると、雑念がなくなりどんどん楽しくなってきます。
バイトを徹底的に楽しむためには、全力で取り組むのと同時に、怒られるときは本当に怒られなきゃいけないと、僕は思います。
たとえ学生に怒られても、自分より経験が浅い社会人に叱られても、その場で自分が一番下っ端なら、上の人の言葉は謙虚に受け止めなきゃいけません。僕は、僕以外は全員先輩だと思いながら働いています。
こういう場面でこそ、バカであることは大事です。自分は何もわからないからと素直に教えを受ける心を持ち、人のために無心で働けることが、僕の考えるバカです。
バカになるには、これまでの経験や実績を脇に置いておくこと。自分が気持ちよく働くためにも、真剣勝負でなきゃいけません。そのためにはプライドを脱ぎ捨てて、たくさん失敗して、たくさん怒られる覚悟を持っておくことです。
人は努力して何かを達成し、成功体験を積み重ねていくと、それが自信になります。けれども、それは傲慢や思い上がりという副作用があることを忘れてはいけません。それでつぶれていくシェフも結構います。
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