中国の輸出管理法にみる「安全保障観」の異様さ

政治の安定優先、域外適用で自在に制裁対象に

習近平国家主席が示した安全保障観は欧米のそれとは大きく異なる。写真は2020年5月の全国人民代表大会第13期第3回会議(写真:新華社/アフロ)

世界中の視線がアメリカの大統領選に集まっていた10月中旬、中国の全国人民代表大会常務委員会が新たな法律を制定した。自国の安全保障を理由に輸出を規制することを可能にする「輸出管理法」である。

安全保障上の問題を理由とする輸出規制のための法律は多くの国がすでに制定している。輸出品が核兵器などの武器開発に使われた結果、自国の安全保障が危うくなることを防ぐためで、日本にも「外国為替及び外国貿易法」などがある。中国が同様の法律を整備することも当たり前のことであろう。

ところがその内容を詳しく見ると、伝統的な安全保障に関する世界の常識とはかけ離れた中国の異様な考え方が見えてくる。

「域外適用規定」のある輸出規制

法律はまず、戦略物資など管理品目を決めて輸出を許可制にするとともに、自国の安全保障などを理由に禁輸企業のリストを作り、これら企業への輸出を禁止するとしている。管理品目や禁輸対象企業のリストは年内にも策定すると伝えられている。

アメリカが大統領選と政権移行期というタイミングでのこうした動きは、中国に対するアメリカのさまざまな輸出規制への対抗措置手段を法的に整備し、新政権の出方次第では厳しい措置を発動するという構えを見せる意図があるのだろう。

しかし、この法律にはそれ以外に注目すべき点がある。法案作成の最終段階でこの法律には「域外適用規定」が追加された。その内容は「中国国外の組織と個人が、本法の規定に違反し、拡散防止などの国際義務の履行を妨害し、中国の国家安全と利益に危害を及ぼした場合は、法に基づいて処理し、その法的責任を追及する」となっている。こうした条文は主要国の法律にはないようだ。

この条文が何を意味しているのか、実はよくわからない。「中国国外の組織と個人」「中国の国家安全と利益」「危害」などのキーワードの定義が書かれていないからだ。「中国の国家安全」は漠然とながら想像できるが、その次に出てくる「利益」や「危害」は幅広い意味を持つ言葉である。

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