和歌山「野菜の魔術師」が東京進出に興味ない訳 1日1組だけ、プロの料理人も訪れる人気店
── 今の注目されている状況についてはどう感じていますか? やはりプレッシャーも感じたりしますか?
「すごくあります。業界の先輩・後輩もそうだし、来ていただくお客さんもそうだし、常にプレッシャーしかないですね。期待値も上がってくるだろうし、そこを超えて行かないとっていう」
── でも、それは好きなことでもあるから、ある部分、楽しみに変換しながらできる?
「できないですよ!」
── え?(笑)
「楽しめないっていうか、楽しめる時もあるんですけど、ほんと吐きそうですね(笑)。お客様は世界中で美味しいものを食べているフーディーって言われる人たちも来るし、同業のシェフたちも来るし。あ、どうしよう、でも料理は決まってないしって。
同じものを作っていければいいんですけど、あれ、もう材料ないしな、次の考えなきゃなって。土地柄、しょっちゅう来てもらえる店じゃないですから、そこでちゃんと結果を出さないとっていうところが……」
── 今のこういう時代ですからね。ネットとかで叩かれたりもするし。
「もしその一つの料理を失敗して書かれてもって思うとね……。でも、今はもうある程度割り切ってます。自分の信じる美味しい料理をただ作ってお出ししてって」
今を時めく人気シェフの予期せぬ本音に多少とまどいながらも、その言葉からは料理にまっすぐ向き合った飾らない人柄が感じられました。
人に教えるのはうまくない
── 今後については何かビジョンはありますか?
「今はもう、和歌山でやってある程度完成したなという思いはあって。ここでやり切ったし、まぁ、これからも続けてはいきますけど。でも、今はできるだけ外に出て、色んな他の土地に行ったりして、交流をもったり。自分が経験できるというか勉強できるところに行って、その経験をもって和歌山に戻って、また新しい気持ちで料理をしていきたいなと」
── そういう気持ちの一環として今回の仕事もおうけになった?
「そうですね。新しいお酒とか素材とか人とかと出会って、新しい発想を得ることで自分の味覚も変わりますから」