ホンダeに見た車が「ガジェット化」する未来 ホンダらしい「走る大人のオモチャ」の実力

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実際にホンダeの最小回転半径は、4.3mしかない。これは「フィット(4.7m)」どころか軽自動車の「N-WGN(4.5m)」よりも小さい数値だ。それだけに、動きは実にキビキビとしている。

その取り回しのよさを体験するために、試乗会会場には段ボールを積み重ねて作った特設の迷路が準備されていた。

取り回しのよさを実体験するために作られた迷路。室内で行われたのはEVならでは(筆者撮影)

最初は「ここを曲がるのか……」と恐る恐るステアリングを切ったが、やってみればいとも簡単に通過できた。操舵感も軽快そのもので、迷路内を操るのがどんどん楽しくなる。ヨーロッパの石畳を軽快に走るホンダeの姿が目に浮かぶようだ。

200kmという実質航続距離をどう考えるか

ホンダeは、EVならではの力強い走りも見せてくれた。車両重量は、フルEVらしく1540kgもあるが、スタートダッシュは半端じゃない。その愛くるしさからは想像もできない、強烈なトルクを発生する。特にドライブモードをスポーツに切り換えると、圧倒的なパワーで前へと前へと押し出してくる。とはいえ、パワーの出方はとてもジェントルで、不快感は一切ない。

走っているときの乗り心地は、ドッシリと安定感がある。これは、バッテリーと制御系統を一体化したIPU(インテリジェント・パワー・ユニット)を床下に置き、50対50の前後重量配分を実現したことが利いているだろう。この走りはひたすら楽しく、“これこそホンダらしいEVだ”と実感する。

コンパクトでキュートな外観。ホンダeの佇まいは欧州だけでなく日本の街並みにも特に似合いそうだ(筆者撮影)

気になるのは、航続距離だ。上級グレードのアドバンスが259km(WLTCモード)で、重量が軽いベース車は1割ほど多い283km(同)となる。実走行が7割程度と考えれば、200km弱だろう。

しかし、頻繁な長距離走行を想定しない“都市型EV”であるホンダeにとって、これは想定内のこと。むしろ、大都市周辺のニュータウン地区などに多い“近所しか走らない”というユーザーには、200Vの普通充電を自宅で行いながら日常の足として使うホンダeのスタイルは、合っているとも言える。

ホンダが得意としてきたコネクテッド機能をデュアルディスプレイで展開し、スマホとの連携も果たしたホンダe。クルマ系ガジェットをふんだんに盛り込んだ「走る大人のオモチャ」と呼ぶにふさわしい1台と言えそうだ。

会田 肇 カーAV評論家

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あいだ はじめ / Hajime Aida

自動車雑誌出版社で編集職に携わった後、フリーランスへ。カーナビの黎明期より進化の過程を追い続け、その発展形であるインフォテイメント系のレポートも行う。使い手の立場でわかりやすいレポートを心掛け、掲載媒体は自動車専門媒体からモノ系媒体にまで及ぶ。カメラ系の情報にも詳しい。日本自動車ジャーナリスト協会会員。デジタルカメラグランプリ審査員。

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