田園都市線新車「ドア横スペース」はなぜ広いか 「狛犬ポジション」の邪魔を回避し遅延抑制
ドア横のスペースを広げた車両は、ほかの鉄道各社にも導入例がある。
先輩かつ代表格といえる車両は、2016年12月に運行を開始したJR西日本大阪環状線の「323系」だ。8両編成のうち、大阪駅でもっとも混雑する位置にあたる8号車のドア付近の空間を大きく広げた構造が特徴。東急の真鍋さんと前野さんも、「調査のため乗りに行った」という。
東京都交通局(都営地下鉄)も、ドア横スペースを広げた車両を導入している。2018年6月に運行を開始した浅草線の「5500形」が最初で、翌2019年2月に投入した大江戸線の新型車もこの構造だ。
都交通局によると、これらの車両は「1人が立てる程度の空間」を確保するために従来より15cm程度スペースを拡大。2022年度から運行する予定の三田線の新型車両「6500形」も座席を6人がけとし、ドア横の幅を約30cmに広げたという。狙いは東急と同様、「立っている人と乗降客の流れを重なりにくくし、乗り降りをスムーズにするため」(都交通局)だ。
ドア横スペースの扱いは、近年の通勤電車の内装において工夫のしどころの1つになっているようだ。
コロナ禍で実力発揮は…
ただ、前野さんによると、ドア横スペースを広げた車両が田園都市線の遅延抑制につながっているかどうかは「現時点では確認できていない状況」(前野さん)という。コロナ禍で利用者が減少する中、列車の遅延そのものが減っているためだ。
国交省が公表した主要駅の利用状況によると、今年9月第1週の田園都市線渋谷駅の朝ラッシュピーク時の降車人数は、前年同時期を100とした場合66で、3割以上減っている。利用者にとっては空いている車内はありがたいが、鉄道事業者にとっては苦しい状況が続く。
ドア横スペースを広げた2020系は今後も旧型車両の置き換えとして増備が続く予定。一方、既存の車両を同様に改修するかどうかは「費用対効果を加味したうえで方針を検討する予定」(前野さん)だ。また、今のところ田園都市線以外の路線への導入については未定という。
混雑によって生じる遅れを少しでも改善しようという工夫から生まれた、ドア横スペースを広げた車両。だが、今後はコロナ禍での行動変容を踏まえた新たな車内の構造も必要になってくるかもしれない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら