田園都市線新車「ドア横スペース」はなぜ広いか 「狛犬ポジション」の邪魔を回避し遅延抑制
ドア横のスペースを広げるには座席を縮小する必要がある。2020系のドアとドアの間の座席は7人がけで、1人当たりの幅は46cm。この幅を狭めるのは座り心地の悪化につながるため、座席数を減らして空間を確保することにした。
座席を大幅に減らせばドア横のスペースを大きく取れるが、「広くしすぎると2人、3人とドア横に固まってしまい、逆効果になってしまう」(車両計画課の真鍋宏嗣課長)。検討の結果、6人がけにすると大幅な設計変更をせずにドア横に幅38cmの空間を確保でき、大人1人がちょうど収まる程度の適度なスペースになることがわかった。
10両中3両だけなのはなぜ?
ただ、座席を7人がけから6人がけに変えると、1両当たりの座席数は6人分減る。「10両編成の全車両をこの仕様にすると60人分も座席が減り、大幅なサービス低下につながる」(前野さん)。ドア寄りの一部座席をはね上げ式にするアイデアもあったが、コストや設計期間の観点から不適当と判断された。
そこで着目したのが、乗降客が最も多い渋谷駅の利用状況だ。朝ラッシュピーク時の各号車の乗降者数を分析すると、かつて6ドア車を連結していたのと同じ4・5・8号車の降車人数がとくに多いことが改めて明らかになった。同駅ホームで階段やエスカレーターの位置にあたる車両だ。ドア横スペースを広げるのは混雑が集中するこの3両に絞り、座席数の減少を極力抑えつつ乗降時間の短縮効果を狙うことにした。
ドア横スペースを広げた車両を連結した最初の編成「2130編成」は2019年秋に登場。運行開始後に渋谷駅での降車時間を比較したところ、一般の車両と比べて1人当たり平均0.1秒早く降りられるとの結果が出たという。一見すれば極めてわずかな差だが、40人なら4秒の違いになる。
「1駅当たり2~3秒の短縮であっても、田園都市線は全線で30駅近くあるので、それだけで1分~1分半の差が出る」と前野さん。ドア横スペースを広げた車両は、「円滑な乗降の促進という点で、ある程度目論んだ通りの効果が得られていると考えている」との認識を示す。
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