「コロナ不況」過去のものと根本的に異なる理由 不況でむしろ購買力が増しているアメリカ人

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1つには何百万という人々が依然として失業状態にあり、労働市場の回復に失速の兆しが出ているためだ。アメリカは新型コロナの感染第3波にも見舞われている。追加の経済対策をめぐっても、連邦議会は党派対立で身動きがとれず、与野党の協議が前に進まない。貧困状態にある住民の数は5月から800万人増えた。

貧困層の人々はそもそも、こうした金融サービスを利用できる立場にはないため、経済苦がクレジットやローンのデータに反映されることは少ない。賃金の低迷、起業の減少、有利子負債の累積コストといった不況の長期的ダメージは、今後何十年と続くおそれがある。

構造的な脅威には直面していない

とはいえ、家計は今のところ新型コロナによる経済的混乱に耐えることができている。その大きな理由は、今回の不況がかなり異質なことにある。パンデミックによって終止符が打たれるまで、アメリカでは史上最長の景気拡大が続いていた。

2008年のリーマン・ショック時に比べると、人々の資金繰りに比較的余裕がある状態で今回の不況に突入したということだ。リーマン・ショック時にはリスクの高い住宅ローンが銀行業界を徹底的に打ちのめし、巨大な金融危機に発展したが、今回は銀行も借り手も、そのような構造的な脅威には直面していない。

さらに前回と同様、政府の迅速な支援策で巨大な危機の痛みも和らげられている。失業手当の上乗せ、景気の刺激を狙った1人当たり1200ドルの個人現金給付、中小企業に対する支援策はこの春、即座に効果をもたらし、失業した人々はこれらの支援金を家賃や生活費の支払いに充てた。借金の返済や、貯蓄に回した人もいる。

信用スコアを手がけるデータ企業FICOでスコアおよび予測分析担当のバイスプレジデントを務めるイーサン・ドーンヘルム氏が言う。「政府の迅速で総合的な経済対策と金融支援は前例のない規模に達し、大きな影響をもたらした」。

玩具デザイナーをしていたダニエル・ブレナンさん(46)は、3月に失業してから給付金とローン返済猶予プログラムの組み合わせで家計をやりくりしている。連邦政府の学生ローンの返済が6カ月間猶予されたことから、毎月の支払いが280ドル抑えられた(返済を求める請求書は10月から再び届くようになったが、返済猶予の延長を申請し、来年2月までの延長が認められている)。

ブレナンさんは、新型コロナの感染拡大が本格化する前に妻と別居し、アパートで1人暮らしを始めていたが、今はアパートを引き払ってペンシルベニア州ウィローグローブにある持ち家に戻っている。間もなく離婚する妻と同居することになったわけだ。

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