となれば、どこからこれらを解きほぐせばよいか。
1つは、非課税限度額を実質的に統合することである。「実質的に」とは、私的年金と非課税貯蓄の課税タイミングが異なる点に配慮するということである。
例えば、100万円の資金を、同じ期間だけ、同じように運用して、結果的にどちらの仕組みを使っても同じだけ所得税が課されるような税制にできればよい。そうすれば、どちらの仕組みが有利か不利かということがなくなる。
私的年金のように、まずは課税されずにより多く運用に回せるようにして後で課税されるのがよいか、NISAのように先に課税されるが、運用益が出ればそれだけ課税されずに得られるのがよいかを、運用する人の好みに応じて選択すればよい。そして、非課税限度額を実質的に統合するためには、所得税制を改める必要がある。
一時金払いの税制優遇は不要
もう1つは、老後に年金払いにするより、一時金払いにしたほうが税負担が軽くなるような仕組みを改めることだ。この仕組みがあるがゆえに、多くの人が老後の生活資金をコツコツ取り崩す年金払いではなく、ひとまず全額を引き出す一時金払いを選んでいる。
しかも、一時金払いを必要としない人まで、税負担が軽くなることに誘導されて一時金払いを選択している。一時金払いで受け取ったお金をタンス預金にしたばかりに、詐欺などの犯罪に巻き込まれる高齢者まで出てくる始末である。
一時金払いを税制でそこまで優遇する必要はない。一時金払いの象徴は退職金である。もちろん、老後の生活資金や住宅ローンの返済資金として退職金を当てにしている人は多い。そうした人の退職金に重い税負担を課すわけにはいかない。ただ、老後の生活資金に充てたいと考えるなら退職金を一時金払いにする必要はなく、年金払いにすればよい。しかし、現行税制だと、一時金払いにするほうが税負担が軽くなる場合が多い。
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