2020年の為替相場を検証し今後の投資を考える 年初来の対ドルレートの動向から見えるもの

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ところで、現在のような不安定な局面では新興国通貨は総じて敬遠されやすい印象もあるが、例えばメキシコペソなどは経常黒字でなおかつバイデントレードにより選好されやすい通貨とも考えられ、今後の上昇余地に期待したい通貨である。メキシコペソに限らず、トランプ政権に冷遇されていた国の通貨は買われる可能性がある。

片や、ノルウェーやロシアはまとまった幅の経常黒字があるのだが、値動きが冴えない。これはコロナ禍を受けて実体経済が癒えるまでは、原油需要も復元されず、産油国の通貨は軟調な値動きを余儀なくされるという含意になるだろう。この意味ではメキシコペソにも原油相場で振れる危うさは残る。

円のボラティリティが小さくなった

近年、円相場は市場参加者の関心が薄れていることからそもそも取引量自体が細っており、「終わった通貨」のように評価する声もある。正直、それを全否定できないような状況ではあるように思う。だが、「有事において対ドルでの価値が安定している」という事実は地味ながらも前向きな事実とも言える。金融市場において「ボラティリティが小さい」ことは予見可能性が高く、リスク量が小さい「価値が安定した資産」という評価につながる。

そのような通貨が自国通貨であるという事実は国、経済、ひいては国民にとって僥倖(ぎょうこう)と言えるものだ。往時のような迫力はないため注目は薄れがちだが、「やっぱり円は危機に強い通貨だった」という整理は誤りではないと強調しておきたい。
 

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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