2020年の為替相場を検証し今後の投資を考える 年初来の対ドルレートの動向から見えるもの

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この種のドル買いはリーマンショック直後にも見られた急性的な反応であり、金融市場における脊髄反射のようなものだ。消費者がマスクの購入に殺到して価格が高騰したのと同じで、購入対象の本質的な価値を示すものとはいえない。金融機関は実際にドルが不足しているから調達したいわけではなく、「不足しそうだから」調達を試みたもので、一過性の動きで直ぐに収束した。

ユーロも経常黒字の定着でリスクオフ通貨に

また、5月に入ってからはユーロ相場の復調が目立ち始め、6月以降、はっきりと年初来上昇圏に復帰、足元に至るまで騰勢が続いている。この間、域内の新型コロナウイルスの感染動向には紆余曲折があり、これに応じて実体経済への懸念も変化したが、ユーロ相場は大きな動揺もなく現在に至っている。

「ユーロは今後リスクオフ通貨としてのポジションを確立していくのではないか」という主張は、2014年に刊行した拙著『欧州リスク:日本化・円化・日銀化』で展開したものだが、ここにきて本当にそうなりつつあるようにも感じる。

やはり世界最大の経常黒字(および貿易黒字)や長年続くディスインフレ状況は通貨高の理由として正当なものであり、実体経済の強弱とは無関係に威力を発揮する。政治や経済の強弱と通貨の強弱がリンクしないことは日本がどの国よりも痛感した事実である。ユーロ圏は政治的には常時不安を抱えているが、「永遠の割安通貨」を擁するドイツがコンスタントに外貨を稼ぎ続けることから「需給面では堅調なユーロ」という論点が崩れることはない。

こうした需給の強さは現在のような「金利のない世界」では尊重される側面であり、これは欧州大陸が現在、本格的な感染第2波に見舞われている中でユーロ高が進んでいることからも明らかである。こうした動きはリーマンショック後、ユーロ圏の経常黒字が安定していなかった時代では見られなかったものだ。当時はリスクオフ時にユーロは売られやすい通貨だった。

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