三陽商会はなぜバーバリーを失ったのか 屋台骨喪失の内幕と、激化する跡地争奪戦

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今後の焦点は、全国に300ほどあるといわれるバーバリーの百貨店売り場がどうなるかだ。三陽商会は、事業終了となるバーバリーロンドンの後釜として、新たにライセンス契約を結んだばかりの「マッキントッシュロンドン」や「ポールスチュアート」に差し替える形で百貨店の売り場に出店したいと説明する。

マッキントッシュとポールスチュアートはそれぞれ2007年に八木通商が、2012年末に三井物産がブランドを買収しており、バーバリーのように突然ライセンス契約を打ち切られるリスクは少ない。また、ブルーレーベルとブラックレーベルの新たなライセンス契約についても、従来のバーバリーチェックやロゴの「ホースマーク」は使えなくなるものの、なんとか売り場を継続して経営への悪影響を緩和したいという三陽商会の思いがにじみ出る。

交錯する三者の思惑

ただ、百貨店が三陽商会の要望どおりに売り場を維持するか否かについては意見が分かれる。

三越伊勢丹HDの大西社長は「三陽さんもほかにいくつかブランドをお持ちなので、できれば三陽さんとお付き合いをしたい」と語るが、中堅百貨店の役員からは「百貨店も長く続いた衣料品の不振から、売り場の再編集に力を入れている。バーバリーのブランド名やロゴが外れたブランドでは残す魅力は薄い。時間は十分あったのに、ほかのブランドを育成できなかった三陽商会さんも甘い」という厳しい声もあがる。

競合のアパレルメーカーも、「バーバリーの売り場は百貨店内で最高の立地を占めている。仮に空きが出るならもちろん出店したい」(大手アパレル役員)と眼を光らせる。三陽商会の杉浦社長は、「これから百貨店に売り込んでいく」と意気込むが、バーバリーの売り場をめぐっては三陽商会と百貨店、競合の百貨店系アパレルの三者の思惑が交錯する。どこまで売り場を維持できるかは、三陽商会の営業力が問われる形になる。

三陽商会が契約終了と同時に策定した向こう5カ年の中期経営計画では、今後「ポールスチュアート」「マッキントッシュ」「エポカ」の基幹3事業や、「アマカ」など自社ブランドの準基幹4事業を成長の柱に据え、2018年12月期に売上高を1000億円まで回復させる青写真を描く。だが、達成に向けてのハードルは決して低くない。バーバリーという大黒柱を失った今こそ、名門アパレルメーカーの真価が問われている。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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