東大に受かる子がやっている「数学」勉強のコツ 東大受験専門塾「鉄緑会」講師が教える
「型」だけで対応できる問題ももちろん出題されはしますが、一定以上のレベルの入試問題について言えば、そのような問題では受験生の間で差はつかず、そうでない問題で差がつくわけです。「型」を身に付けるのは、差がつくレベルの問題に挑戦するための必要条件にすぎず、それだけでいいなんてことは絶対にありません。
定石 vs 思考力
たまに、「数学はパターンを暗記すれば大丈夫だ」と言う人がいます。その意図もわからなくもないのですが、それと同時に、そう言い切るための根拠も薄いと思います。何を「パターン」と呼ぶか、何を「暗記」と呼ぶか、その場で必要なアイデアがどれくらい浮かぶか、などの人による部分、そして目標とする大学の入試問題のレベルによる部分の両方ともが大きすぎるからです。
入試における数学では、新しい問題にぶつかったときに「それまでの経験・知識をどのように応用するか」という部分が大切になってきます。したがって、中高6年間の学習の中のどこかのタイミングで、「型を身に付けるフェーズ」から「型を応用するフェーズ」に学習姿勢を切り替える必要があるのです。
それがうまくいかない人は受験勉強で苦労します。「身体に覚えさせること(その場では考えないこと)」と「それを組み合わせること(その場で考えること)」との区別がつかず、いつまで経っても低学年時の学習の仕方を引きずってしまうのです。そのような人は頑張っても頑張っても成績が伸びず、「こんなに頑張ってるのになぜ伸びないんだろう?」「自分はダメなんじゃないか」と落ち込んでしまいます。
新しい問題にぶつかったときに適切な解法が浮かぶかどうかは、どれだけの解法を覚えてきたかではなく、どれだけ自分の頭で考えてきたか、そしてどれだけ数学的な頭の動かし方ができるようになっているかによります。
考え方をしっかり理解したうえで、繰り返して身体に染み込ませる。そうして自分のモノになったものだけが、試験本番で追い込まれたときに真価を発揮します。
「数学的な頭の動かし方」をせず、解けなかった問題について解答を読んで理解し覚えようとする勉強。これが最もやってはいけない勉強です。覚えようとすることは、理解することを放棄することにほかなりません。
覚えればどうにかなるだろう、という考えの人は、新しい問題に対して試行錯誤をしたがりません。そんなことをしている暇があったら、模範解答を読んで理解して覚えたほうがいいと思ってしまう。そして覚えようとして、思考停止に陥る。そうしている間にも新しい問題はどんどん出てくる。ひとたびこの「覚える病」にかかってしまうと、そこから抜け出すのはなかなか難しいです。
いちばん厄介なのは、そういった勉強法でも、一定の達成感を得られてしまうことです。「〇時間勉強した」「〇問やった」というのは、このような勉強法をしている人にとって甘い響きのする言葉です。それが実質的な成長を伴ったものでなかったとしても。でもそれでは何の意味もないのです。結局大事なのは、「何をやったか」ではなく、「何をできるようになったか」なのですから。
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