温泉地でワーケーション、仕事できるか試した 筆者が実証実験に参加、場所は和歌山県白浜

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ワーケーションを行うメリットの一つに「メリハリ」があるように感じる。筆者は仕事がたまってくると自宅での仕事をあきらめ、温泉地などに宿を取り、集中的に仕事に取り組むということを、もともと年に数回行っていた。今考えるとこれがまさにワーケーションだったわけだが、「キリがついたら温泉に行こう、付近を散歩しよう、食事に行こう」というオンとオフのメリハリがつく。普段の自室とは違う環境というのも気分転換になり、効率も確かに上がる。

共有のワーキングスペース(筆者撮影)

観光地ということで誘惑も少なくないが、だらだらと自室にいるよりも「仕事をするためにお金をかけてここにやってきた」という固い意志が芽生えるので、すぐに仕事に没入することができる。

今回は白浜が目的地だったこともあり、目の前は海。宿泊施設のワーキングスペースからも海が見える。長時間のPC作業で疲れた目を癒やすにはこうした色鮮やかな遠景は最適だ。そうした面では都市部にあるコワーキングスペースより、観光地へ「遠征」する明確な意味がある。

加えて、周りを見渡すとほかの参加者が一心不乱に仕事をしており、「観光気分に浸っていてはいけない」という気持ちになる。「真面目に仕事しなくては」とつい手が伸びがちなスマホやSNSも遠ざけた。隣で英語で打ち合わせしている人がいようものなら、自分の語学力のなさを改めて反省する。こんなところもワ―ケーションのメリットかもしれない。

「バケーション」も忘れずに

逆に、お金をかけて観光地に来たので、ワーク後のバケーションを本気で満喫するのも忘れない。「仕事を真面目にやり抜いた」という達成感は、バケーション部分を楽しむうえでの最高の隠し味だ。きちんと仕事をせずに「サボった」と自覚したままでは楽しめるものも楽しめない。

宿を出ればすぐに白良浜。気分転換には最良だ(筆者撮影)
多くの観光客が集まる夕日の名所円月島。白浜は気軽に入ることのできる外湯も多い(筆者撮影)

そんなワ―ケーションだが、普及への課題もある。個人単位では少しずつ活用者が増えてきているが、テレワークすら抵抗感が強かった多くの企業がすぐに受け入れるとはにわかに信じがたい。また、共有スペースでの仕事は自ずと機密性の高い業務や打ち合わせはできない。ドミトリータイプの部屋に抵抗感がある人も多いだろう。

「仕事とリフレッシュ、また家庭がある人であれば、自宅外で仕事をすることで家庭全体のリフレッシュにつながる」と大瀬良共同代表は話す。確かに新しい可能性を感じる次の文化に思えるが、「テレワーク」「オンライン会議」「ワーケーション」「サブスク」と続々と登場する新しい文化が定着するまでには時間がかかる。ていねいに時間をかけ、説明していくことで次の可能性が見えてくるはずだ。

村上 悠太 鉄道写真家

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むらかみ ゆうた / Yuta Murakami

1987年東京都生まれ。高校時代には「写真甲子園」に出場。交通新聞社『鉄道ダイヤ情報』にて「突撃!ユータアニキ 鉄道HERO完全密着」連載中。撮影の講師や講演を多数行う。

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