ヤフー、「イー・アクセス買収中止」の不可解 この2カ月間にいったい何があったのか

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それではいったい、なぜ買収を止めたのか。ヤフーは「協議を重ねた結果、ヤフーはサービス、イー・アクセスはインフラという形でそれぞれの強みを生かし、協業した方がいいとの結論に達した。こちらからソフトバンクに買収中止を伝えた」と説明する。

しかし、こうした買収効果への疑問は、発表当日にも報道陣やアナリストからさんざん指摘されていたこと。買収前から事業環境はさほど変わっていない。この2カ月で何があったのか。

ソフトバンクの資金繰りに変化

考えられるのはソフトバンクの資金調達環境の改善だ。まずは出資先のアリババの上場。アリババは5月7日に米国で上場申請を行った。株式の34.4%を出資するソフトバンクは「今回の上場で株式は売却しない」(孫社長)と明言しているが、上場により数兆円の含み益を手にすることになる。アリババの時価総額は15兆円以上とも予想され、株式を売却すれば、数兆円のキャッシュを得られる可能性がある。さらに、5月16日には個人向け社債3000億円を利率1.45%で調達することを発表した。現在協議を進めている、米携帯4位のTモバイルUSを買収する際に必要な資金繰りが付いたとも考えられる。

「電波割り当ての問題もあるのではないか。ソフトバンクは、イー・モバイルをソフトバンク子会社ではない形にすれば有利になると考えたものの、そうした効果を期待できないと分かり意味がなくなったのかもしれない」(業界に詳しいアナリスト)との声もある。いずれにしろ、2カ月で変化があったのはソフトバンクの置かれた環境であり、ヤフー側に変化があったようには見えない。

ソフトバンク、ヤフーの取締役をみると、ソフトバンクの孫社長がヤフー会長、ヤフーの宮坂社長がソフトバンクの取締役、という具合に重複している。ヤフーの取締役5人のうち、孫社長と宮内謙ソフトバンク副社長、宮坂社長の3人がソフトバンク取締役を兼務している。両社で独立した意思決定が行われていない可能性も高い。

素早い買収発表、そして素早い撤回は、スピード経営との評価もできるだろうが、両社が杜撰な意思決定をしている可能性が高いことを露呈したともいえる。社名だけが「ワイモバイル」に変わる、というのも、やや解せない内容である。

長谷川 愛 東洋経済 記者
田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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