ヤフーが通信事業参入、得をするのは誰か

ソフトバンクの携帯事業を子会社が買う利点とは

何とも不可思議な取引である。ヤフーが親会社のソフトバンクからイー・アクセス(サービス名はイー・モバイル)を買い取り、携帯通信事業に参入するのだが、肝心のヤフーにとってのメリットがわかりにくいのだ。

宮坂学社長は今回の取引について、「こちらから提案した」と強調。そのうえで、次のようなシナジーを強調する。

まずイー・アクセス傘下の携帯ショップ約1000店で、有料サービス「ヤフープレミアム」や各サービスのプロモーションを展開する。さらに、従来型のガラケーユーザーを取り込むことでスマートフォンの普及を促し、注力中のモバイル広告やeコマースを成長させるという。具体的には、6月に合併予定のPHS大手・ウィルコムを含めて1000万人いるユーザーを、早期に2000万人以上に引き上げると宣言した。

こうした説明からは、メリットがたっぷりとあるように感じられる。しかし、プロモーションという点では、すでに全国約2600店舗のソフトバンクショップでヤフープレミアムの会員獲得を進めてきた。店舗をヤフーショッピングの商品受け取りに利用する案も披露しているが、一部では24時間営業のコンビニでの受け取りに対応しているため、新たなメリットとはいいがたい。

もう一つのスマホの普及を促す、という狙いもわかりにくい。イー・アクセスは、モバイルWi-Fiルーターのユーザーが大半で、スマホユーザーは少ない。ウィルコムも音声通話を中心に利用されており、格安スマホに力を入れたのは昨年夏以降のこと。「格安携帯会社」として独自のニーズを開拓してきた両社には、スマホのヘビーユーザーは少ない。

キャッシュマシン?

一方、親会社のソフトバンクのメリットは明白だ。同社は現在、米国戦略に注力。3月以降、孫正義社長は現地でのテレビ出演や講演会を通じ、通信市場の活性化の必要性をアピール。携帯3位のスプリント・ネクステルに続いて、4位のTモバイルUSの買収を目指しているのだ。

そんな矢先に行われた今回の取引で、ソフトバンクは貸出金の肩代わり返済と合わせ、約4500億円もの現金を確保することができる。Tモバイルの株式時価総額は2兆円を超えており、過半の株式を握るためには、莫大な元手が必要だ。次なる大型M&Aに備えた動きと考えれば、合点がいく。

アナリスト説明会では、「ヤフーはソフトバンクのキャッシュマシンになっているのではないか」との厳しい質問も飛んだ。つまり、ヤフーがあえてソフトバンクに資金を環流させているのではないか、との疑念だ。

実際、両社の意思決定が完全に分離されているようには見えない。ソフトバンクの孫社長はヤフー会長を兼ね、宮内謙副社長もヤフー取締役を兼務している。逆に、ヤフーの宮坂社長はソフトバンク取締役だ。ソフトバンクの取締役は7人、ヤフーの取締役は5人という中では、この3人の存在感は大きい。

言うまでもなく、ヤフーは上場企業。第2位の大株主として米ヤフーが35.1%出資しているほか、多くの少数株主が支えている。

買収発表の翌日、3月28日の株価は一時11%安となり、終値も前日比6%安の514円だった。その後も同水準で推移しており、昨年12月以来の安値圏にある。株式市場が今回の巨額M&Aに動揺しているのは明白だ。

「(親会社との取引なので)いろいろと言われることを覚悟しているが、ヤフーが運営したほうが絶対に伸ばせる」(宮坂社長)。大枚をはたいただけの成果を具体的な形で示し、「ソフトバンク以外の株主」を納得させなければならない。

週刊東洋経済2014年4月12日号

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