パスモ「iPhone対応」、私鉄陣営は次に何を狙う スイカに遅れた理由は「定期券対応の難しさ」

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さらに、モバイル化には大きなメリットがある。それは定期券発売にかかる手間が減ることだ。「定期券を購入するための行列がなくなり、どこでも好きな場所で購入できるようになる」と、パスモ協議会の五十嵐秀会長は話す。

春などの定期券購入シーズンには混雑する駅の定期券売り場(写真は東京メトロの研修施設)(撮影:尾形文繁)

定期券を購入できる自動券売機も増えているとはいえ、定期券の購入シーズンになると、今も駅の窓口には長蛇の列ができる。バスの定期券も購入できる場所が限られているため手間がかかる。モバイル上で定期券が買えるようになれば利用者への恩恵が大きい。

それだけではない。鉄道事業者の側にもモバイル化のメリットは及ぶ。定期券の価格は6カ月定期なら10万円を超えることもざらだ。定期券販売で駅が多額の現金を取り扱うのは保安上のリスクがある。モバイル化によって定期券のスマホ決済が進めば、鉄道事業者にとって頭の痛い問題が1つ減ることになる。

パスモは今後どこへ向かう?

では、モバイル化を実現したパスモは、今後どのような方向に進むのだろうか。参考になるのは先行するスイカの事例だ。

JR東日本はスイカとみずほ銀行や楽天ペイなどのスマホ決済との連携を進め、ますます使い勝手を向上させている。また、スイカに地域交通定期や地域独自ポイントなどのサービスを取り込んだ地域連携ICカードの開発も進めており、2022年春開業予定の宇都宮ライトレール(栃木県)への導入を念頭に、2021年春には地元バス事業者の関東自動車など宇都宮地域で導入を予定している。

その延長線上には、MaaS(Mobility as a Service)での活用がある。スイカ1枚でシームレスな移動を可能にする新サービスの導入実現を急ぐ。

では、パスモの次の目標は何か。中島氏によれば、「先日JR東日本がモバイルスイカ会員数の1000万人突破を発表したので、(パスモのモバイル利用者数)1000万人を目指していきたい」。まずはモバイルでの利用者を増やすことを第一に掲げて取り組む方針だ。

スイカのように金融機関との連携やMaaS対応を目指すのかという問いに対しては、パスモ協議会は「多種多様なお客様ニーズに応えるようサービス展開を図っていく」というコメントにとどまり、具体的な施策についての説明はなかった。

パスモ陣営は「次の一手」に関する発言を避けたが、協議会メンバーならは誰もが利便性をさらに高めたいと思っているはずだ。会員数拡大を目指すのと並行して、スイカに負けないような利便性向上への取り組みを打ち出してほしい。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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