KDDIがJCOM買収で2度目の誤算、住友商事がTOB実施で争奪戦に

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 TOBを使わずに相対(あいたい)取引で3分の1超の株式を取得する方法に、金融庁が金融商品取引法に抵触するおそれがあると指摘。買収を押し通せば莫大な課徴金を食らう可能性が出てきたため、急きょ、手法の変更に追い込まれた。

結局、リバティから買い取る株式の一部(6・7%分)を信託銀行へ譲渡し議決権を凍結することで、出資比率を3分の1以下(31・1%)に抑える苦肉の策を12日に公表。法令抵触という最悪の事態をかろうじて回避したかと思いきや、その矢先に浮上したのがTOBだった。

自前の固定通信インフラが乏しいKDDIは現状、高速のブロードバンドサービスを展開するうえで、設備を競合のNTTから借り受けている。ただ、その使用料が高く割に合わない。

だからこそ出資を皮切りに、JCOMが持つ1200万世帯分の自前回線網を活用し「NTTへの依存度を下げたい」(小野寺社長)という明確な狙いがある。

しかし、住商側は15日の会見で、「JCOMのコアの事業は有料多チャンネル放送。ここを牽引していく。それに付随して電話やインターネットのサービスがある。KDDIの得意とする世界とはだいぶ違う」(大澤取締役)と、牽制した。

不可欠な2社の協調

筆頭株主の座を奪い取るとはいえ、住商も経営権を握る過半を取得するわけではない。今回、TOB実施に必要な資金は最大で1200億円超。現在のJCOMの利益水準を前提とすれば、投資回収に30年以上の時間を要する。それに見合う効果を上げるには、KDDIとの協調は欠かせないだろう。

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