スガノミクスでも絶対に「経済成長」は起きない そもそも「経済成長」って何のことなのだろうか

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一方、海外からの投資の中には、質的に異なった資本投入も存在する。これには意味がある。2018年にノーベル経済学賞をとったポール・ローマー(スタンフォード大学教授)が1980年代に提唱した「新しい成長論」と呼ばれる理論においては、「知識が経済成長を生み出す」と考える。つまり「資本とともに知識が入ってくれば、その新しい知識は量ではない質的な経済成長、真の経済成長をもたらす」ということだ。それはいわばイノベーションの輸入であり、それが刺激となって新しいイノベーションが国内でも生まれるというものだ。

シュンペーターは正しくても「威を借る輩」は間違い

しかし、この「イノベーションが経済成長をもたらす」という考えも、実は間違いだ。これが第3の間違った経済成長である。

なぜか。イノベーションを提唱したのは、20世紀初頭から中盤にかけて大活躍した経済学者のヨーゼフ・シュンペーターということになっている。雑に言えば、彼は有名な「創造的破壊」によって、既存の大企業などの既得権益となっている産業構造を壊し、独占力を壊し、そこに企業家(起業家ではない)が参入し、「新結合」(すでにあるものの新しい組み合わせ)で新しい産業構造を作りこれが経済発展をもたらす、と主張した。現代では、これを勝手にイノベーションと呼んでおり、これが経済成長をもたらすことになっている。

確かにシュンペーターは、正しい。だがその威を借りて、イノベーションや起業家を礼賛している現代の人々は間違っている。なぜなら、現在起きているイノベーションのほとんどは、産業構造を破壊し、新しい価値を人々にもたらしているのではないからだ。いわば企業覇権の交代を目指し、新しい独占構造を作り上げ「利益」(経済学的には独占的利潤、余剰利潤、レント、正当な利潤を超えた利潤のこと)を貪ろうとしているのである。響きのよい言葉のように聞こえるが「プラットフォームビジネス」などはすべてそうだし、ITの覇者のほとんどはこれだ。

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