「チーズタッカルビ」ブーム作った男の凄い商才 大事なのは「多少の浮き沈み」は気にしないこと

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韓国で人気になっていたハットグは新大久保でもちらほらと売られていたが、2017年頃までは目立つメニューではなかったそうな。街に点在する軽食スタンドでも、トッポギとかキムパ(のり巻き)などに交じって売られているにすぎなかった。それが2017年9月、「アリランホットドック」がハットグを大々的にメインに押し出して売り始めると、あっという間に大流行となったのだ。具材がいろいろ選べて楽しく、チーズがうにょーんと伸びる様子はいかにもインスタ向きで、友達同士の食べ歩きにはちょうどいい。

一大ブームとなった2018年夏には、この1号店だけで1日2000個が売れたというからすごい。

「で、私はその年の11月に入社したんです。店のフランチャイズ化、全国展開を担当するためです」

金さんのもと「アリランホットドック」は日本全国に勢力を広げ、新大久保のほか上野、原宿、富士急ハイランド、沖縄などなど、各地に展開している。フランチャイズを任せているのは日本人もいれば韓国人もいるそうだ。

金さんが日本で働く理由

金さんはそもそも、日本で働くことになるとは思ってもいなかったそうだ。

「海外留学はしたかったんですけど、アメリカかオーストラリアを考えていて。でも妹が、日本に留学していたんです。それで妹を訪ねて遊びに来たのが、初めての日本です」

その旅で興味を持って、日本語を勉強し始めた。富山で1年間の交換留学も経験する。さらにワーキングホリデーのビザも取った。日本でアルバイトしながら、もっと語学に磨きをかけよう……そうは思いながらも、進路に悩み、結局は韓国で就職をしたのだという。

「でもね、どうにも仕事が合わないなって感じていて。貿易関連の会社だったんですが、働きながらも迷っていたんです」

そんなときに、仕事で会ったのが「ソウル市場」の社長だった。韓国食材を幅広く扱うスーパーマーケットで、新大久保を代表する店のひとつだ。アイドルと化粧品から一歩踏み込んできた韓流女子たちが、食材や調味料を買いに来る。「ソウル市場」はほかにもレストランやショップなどを幅広く展開している。仕事はいろいろあるから、と誘われて、新大久保にやってきた。

それから10年、金さんは街の移り変わりを見てきた。

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