おいしくなった?冷凍ラーメン超絶進化の裏側 キンレイ「お水がいらない」シリーズ人気のワケ

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加熱時間は6分30秒とインスタントラーメンより長いが、完成品は店で出されるラーメンの食感や味わいに近い。コロナ禍により「専門店に行けなくてもこれで十分」、とSNSで評価する人もいるほどだ。

麺、スープ、具材が一体化しているラーメンを加熱するとこの通りに。写真は人気の「横綱」(写真:キンレイ提供)

実際、冷凍麺の開発には労力を惜しまない。例えば人気ラーメンチェーンの味を再現し、2014年に発売した「お水がいらない ラーメン横綱」の豚骨醤油味は、試作の20回目に、ラーメン横綱側から「もう無理じゃないか」と引導を渡されかかった。しかし、その後も挑戦を続け、60回目に完成した執念の商品である。

2017年には、食材が焦げやすく手入れに手間がかかるが、プロの厨房でも使われる鉄の鍋を、思い切って工場に導入。同社商品企画チームの福田暢雄氏は、「鶏ガラや香味野菜で出汁を取る、鉄鍋で食材を炒めるなど、できる限りプロの技法を再現し、生産性とドッキングさせています。工場見学に来られた四海樓社長からは、『うちの厨房と同じ音と香りがする』と言われました」と話す。

同社では、料理人の指導を受ける、「味の探求プロジェクト」として年に一度、社員が鍋焼きうどんを手作りするなど、工場での食品の「製造」に「料理」として取り組む精神を養っている。

冷凍麺業界に起きた「革命」

前述のとおり、キンレイは大阪ガスの子会社だったが、上場した後に投資ファンドに買収されたりと紆余曲折を経た後、冷凍食品部門は日本酒大手月桂冠の傘下に入った。その際、企業理念を見直したことが、商品開発にもつながっている。

「冷凍麺がおいしくなった」。近年、こんな声を聞くことが多くなったが、実際、キンレイが存在感を増した2010年代は、ラーメンに限らず、冷凍麺全体の質が向上するタイミングでもあった。日本冷凍めん協会の那須氏によると、2010年頃に設備更新の時期が来た工場が多く、フロンの替わりに液化炭酸で冷却するフリーザーを入れ始めた。

従来の機械は冷凍するのに30~40分かかっていたが、今のものなら10~13分で冷凍できる。「冷凍のスピードが速くなれば、麺内部の水分が大きな氷の結晶となり麺の組織を壊すことを防ぎ、おいしさを保ちやすいのです」(那須氏)。つまり、急速冷凍によって、日本人が好む外はもっちり、中は少し硬さが残る、ゆでたての食感が実現できるようになったのである。

「また、生地を練りながら空気を抜き熟成時間を短縮する真空ミキサーを、10年ほど前までの間に各社が順次導入していきました。多加水の技術、練り方の技術、機械の改良などの技術が進化し、熟成時間が短縮され、茹で時間が効率化されています。その結果として、冷凍の際の劣化が極めて少なく、コシのある、食感がよくのど越しのいい冷凍麺ができるようになりました」(那須氏)

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