足立区の病院「クラスター発生→撲滅」の全記録 立ち入り調査きっかけに「職員の士気上がった」

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東京都は、過去に相次いだ救急搬送患者の「受け入れ困難問題」を解消するために2009年8月、「救急医療の東京ルール」を導入した。東京ルールとは救急隊が「受け入れできるか」を医療機関に5回以上照会したか、搬送先選定に20分以上かかったケースで発動される。その後に「地域救急医療センター(センター病院)」に連絡して、受け入れ病院の調整を実施するか、センター病院が直接受け入れる仕組みだ。センター病院の選定は、固定制・輪番制・調整のみ担当など医療圏により異なる。

この東京ルールは、今年に入り3月までは1日約20件発動されていたが、新型コロナ感染が拡大した4月から5月にかけて急増し、1日最大120件程度に達した。それに伴い、救急搬送件数で年間2700件~2800件程度の等潤病院で4月、前年比約6割増となった。

ゴールデンウイーク中は1日最大約40件の救急搬送があり、区外からの救急搬送も少なくなく、世田谷区や大田区からの患者もいた。国が緊急事態宣言を解除した5月25日以降も、前年比1割から3割増で推移した。8月17日以降は救急受け入れを制限したため1割増にとどまったが、同月前半の受け入れ増は顕著だった。(下図参照)

(外部配信先では図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

「うちが引き受けなければ患者は行き場をなくす」

院内からは、「周りの病院が怖じ気づいて、新型コロナ疑い患者を引き受けないのに、どうして等潤病院だけが受け入れているのか」という抗議もあったが、伊藤院長は「発熱の患者は、新型コロナ疑いだけではない。うちが引き受けなければ患者は行き場をなくしてしまう。2次救急病院の役割を果たして足立区を含めた近隣の最後の砦となるためには引き受けざるをえない」と説明して、受け入れを継続した。

東京都は6月30日に新型コロナ疑い患者に対応した「新」東京ルールをスタートさせた。「新」東京ルールでは、都が新たに指定した「新型コロナ疑い地域救急医療センター」病院が患者を必ず受け入れることになり、等潤病院も名を連ねることになった。等潤病院はこれにより初めて、公的支援を受けることとなった。

2次救急病院は、救急搬送依頼を断らず受け入れるのが原則だが、それでも生じる救急搬送患者の「受け入れ困難問題」に対応するために従来の「東京ルール」が創設された。このコロナ禍ではこの「東京ルール」では対応できなかったため、「新」東京ルールを新設せざるをえなかった。このこと自体がすでに、2次救急崩壊の危機を意味している。

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