三菱地所、東京駅で進める「日本一ビル」の勝算 オフィス不要論あるが、中長期需要には楽観的

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主要デベロッパー各社による都内の大規模再開発は、五輪が開催されるはずだった2020年度で一段落するものの、2023年度以降も計画が目白押しだ。

表は計画が進行している高さ100m以上のオフィス中心のビルを柱とする大規模再開発計画を集計したもので、タワーマンションなど住宅中心の計画は除外してある。トウキョウトーチの開業は五輪以降も続く大量供給の後。それだけに三菱地所の強気ぶりが際立つ。

中長期のオフィス需要に楽観的な声

もっとも、中長期のオフィス需要見通しに楽観的なのは三菱地所だけではない。JR東日本、東急、住友不動産、三井不動産、森ビル、森トラストの6社に今後の需要見通しなどを尋ねたところ、回答のなかった森ビルを除く全社が「足元での(テナント契約の)解約はほぼなく、計画の縮小もない」と回答した。

JR東日本と森トラストは「(中長期のオフィス需要は)ソーシャルディスタンス確保のため、1人当たりの床面積を増やす動きに期待できる」と回答。三井不動産は「企業にとってオフィスを減らす決断は簡単ではないはず」と答えるなど、慎重ではあっても悲観論は聞かれない。

足元が厳しいホテルの中長期の需要については、トーンに若干ばらつきがある。森トラストが赤坂ツインタワー跡地でNTT都市開発と共同で進めている「赤坂2丁目プロジェクト」は、オフィス主体でホテル、サービスアパートメント、店舗、診療所も設けるプロジェクトだが、「計画に変更はなく、2025年の全体竣工に向け予定どおり進めている」(森トラスト)という。そして、「首都圏から車で気軽に行けるエリアのリゾートでは、秋の観光シーズンに向け、予約は上向いてきている。国内の観光需要、ビジネス需要の順に回復し、インバウンドは早くて来年の旧正月が重要なポイントになる」としている。

2022年8月竣工予定の八重洲2丁目プロジェクトで、日本で初めて世界有数の最高級ホテル・ブルガリホテルを誘致する三井不動産も、「今は訪日需要に強制的にフタがされている状態だが、長期的には日本は魅力のある国だから回復は見込めると思う。部屋数を追うつもりはないが、ホテル開発はこれまでどおり継続する」という。

これに対し、JR東日本は「新型コロナウィルスの収束時期が不明で、需要回復時期を精緻に見込むことは困難だが、ホテル事業はインバウンドの恩恵が大きかったので、以前の水準までの回復にはかなりの時間を要すると考えている」と慎重で、見方が分かれた。

トウキョウトーチ計画で国際級ホテルや大規模ホールを組み込んだ意図について、三菱地所は「ホテルは東京駅前の立地を生かした日本の拠点として、国際級のホテルが必要と考えた。ホールは大丸有(大手町、丸の内、有楽町)や東京全体でのMICE機能を担う意図で追加した」と説明している。

日本を代表する国際級ホテルやMICE機能を備えたホールを設けておくのは、東京駅の目の前で日本のシンボルを自負するビルを建てるデベロッパーとして、当然に果たすべき責務ということなのだろう。

保有不動産に3兆8000億円もの含み益を持ち、年間3400億円を超える営業キャッシュフローを稼ぎ出す同社ならではの余裕と言えそうだ。

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