無症状感染者は素通りできる「検温」の無意味感

検温でできるのは「やってる感」の演出だけだ

日本でも店舗などで入る前に検温することが増えているが、これが新型コロナウイルスの感染予防に大きく貢献しているかは微妙なようだ(写真:Ushico/PIXTA)

少し前から、病院、オフィスビル、工場の入り口で非接触型体温計を持った人々が検温を行うようになっている。熱のある人は新型コロナウイルスに感染している可能性があるため、こうした人々を立ち入らせないようにするためだ。

専用アプリで体温を報告しない従業員は構内に入れないようにした企業もある。ニューヨーク市のレストランは9月末から店内飲食が再開される予定となっており、その際にはレストランの入り口でも検温が行われるようになる。

今回のパンデミックが始まってから検温はますます一般化しており、赤外線式の非接触型体温計や体温スキャナーの売り上げはうなぎ登りだ。ところが、科学研究では、検温は感染予防にほとんど役立たないことがわかってきている。

一部専門家は「無意味」と一蹴

ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は9月上旬、レストランの店内飲食を再開するにあたり、テーブル数に厳しい制限を設け、着席していない客のマスク着用と客の検温を義務づけた。レストランはさらに、各テーブルの客の代表者から連絡先を得るよう求められる。

慎重になって当然だ。今年夏に187人が一度に感染したミシガン州のイーストランシングのように、バーやレストランから集団感染が広がるケースが相次いでいる。アメリカ疾病対策センター(CDC)の新たな研究では、新型コロナに感染した人は感染していない人に比べて、2倍の確率で発症までの2週間にレストランで飲食したことがわかっている(この研究では客席が屋外だったか屋内だったかの区別はなされていないが、大半の専門家は屋内のほうが感染リスクは高くなると考えている)。

しかし、一部専門家は「検温は無意味だ」と一笑に付す。公衆衛生当局はマスクの着用とソーシャルディスタンスの確保を推奨しており、こうした対策は実際に感染予防効果が高いとされている。しかし、建物の入り口などで検温を行うのは「やってる感」を演出するジェスチャーにすぎず、偽りの安心感を与えるものでしかない、と専門家は指摘する。感染者が次々とすり抜けている可能性が高いからだ。

クオモ知事は事業者に対し、客が検温の求めに応じなかったり、発熱が確認されたりした場合に入店を拒否できるようにした。同知事は店内飲食を再開するニューヨーク市のレストランに客の検温を義務づけてもいる。CDCは体温が38度以上ある状態を「発熱」と定義しているが、非接触型体温計の正確性を疑問視する報告が出ている。

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