テスラが「電池の自前化」にトコトンこだわる訳 提携先との関係曲折はパナソニックだけでない

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テスラの「モデルS」の改装を手助けしたのはメルセデス・ベンツのエンジニアだ。しかし、この時点では、モデルSは、メルセデスの「Sクラス」にあるようなカメラや精密な運転支援センサー、ソフトウエアは装備していなかった。

ダイムラーのある幹部エンジニアは「マスク氏はこれらの技術を学び取り、さらに先に進んだ。われわれは我が社のエンジニア連中に、月を狙え(野心的な目標を立てろ)と言い聞かせているが、彼は一挙に火星まで行ってしまった」と驚きをあらわにした。

一方、やはり出資者だったトヨタ自動車<7203.T>はマスク氏に、品質管理のノウハウを伝授。最終的にはダイムラーとトヨタの何人かの幹部がテスラに合流し、アルファベット子会社グーグルやアップル、アマゾン、マイクロソフト、あるいはライバルのフォードやBMW、アウディなどから集められた人材とともに、重要な役割を担っている。

なお高まる不協和音

だが当然のように、あつれきも生まれた。

テスラは14年、自動運転システムの設計知識を得る一環として、イスラエルのセンサーメーカー、モービルアイを提携相手に選んだ。モービルアイの元幹部の1人は、テスラの運転支援機能「オートパイロット」の陰の立役者はモービルアイだと話す。

ところがその後、両社の間に溝が生まれ、16年にオートパイロット使用中のモデルSが衝突事故を起こし、運転者が死亡したのをきっかけに、正式に提携を解消している。

このモービルアイ元幹部は、自動運転車の運転支援用であって完全自動運転向けには設計されていないモービルアイの技術を、テスラが不適切な形で用いたのは疑いの余地がないと憤りを見せた。

モービルアイの後を継いでオートパイロットのサプライヤーとなったエヌビディアも、最終的には距離を置くようになった。エヌビディア幹部のダニー・シャピロ氏は、マスク氏が垂直統合型企業になることを非常に重視していて、自社で半導体を製造することを望んだと説明した。

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