ディズニー「ムーラン」で犯した痛恨のミス 重要市場の中国戦略への「ラブレター」が・・・

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文化的に真実味のある映画を作るため、そして『ムーラン』を壮大なスペクタクルとするため、ディズニーは中国の多彩な景観を作品に詰め込むことにした。中国国内での撮影規則に従い、ディズニーは中国の制作会社と協力して政府の撮影許可を確保。この映画で通訳を務めたスン・ユーさんによると、撮影クルーはトルファン市近くの赤い砂岩の火焔山(かえんざん)など、新疆ウイグル自治区で数日間の撮影を行った。

スンさんが言う。「外国人が大挙して新疆ウイグル自治区を訪れる場合、現地当局はいつもならかなり神経質になる。しかし、このときは当局に理解があり、とても協力的だったため、撮影はすごくスムーズに進んだ」

ディズニーのキャスティングディレクターは完璧なムーラン役を見つけるために、候補者捜しの範囲を全世界に広げ、最終的に中国生まれのリウを選び出した。体力があり、中国では武術ドラマで優雅な乙女を演じる女優として有名だ。子ども時代の一時期をニューヨークのクイーンズで過ごしたことがあり、英語も堪能。ディズニーにとっては理想のムーランだった。

ところが昨年夏、反政府デモで香港の緊張が高まる中、そのリウが中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」に香港警察を支持する画像を投稿した。

投稿は瞬く間に炎上。香港の著名な民主活動家らは即座に映画のボイコットを呼びかけた。

リウの投稿はディズニーにとっては青天の霹靂だった、とウォルト・ディズニー・スタジオのホルン会長は『ハリウッド・リポーター』誌に語っている。「政治と関わることは望んでいない。(ディズニーが)政治的な論争に引きずり込まれるのは、私にいわせれば、フェアではない。私たちは政治家ではないのだから」

中国人の評価はアニメ版を大きく下回る

新疆ウイグル自治区では100万人ものウイグル人(イスラム教徒が圧倒的多数を占め、チュルク語系の言語を話す少数民族)が収容所に大量拘束されており、人権団体はこれを、ここ数十年の中国で最悪の人権弾圧とみなしている。『ムーラン』がエンドロールで謝辞を送った組織には、トランプ政権が昨年、アメリカ企業との取引を禁じるブラックリストに追加した同自治区の警察局などが含まれている。

3人の消息筋によると、新疆ウイグル自治区の問題がスポットライトを浴びる中、中国当局は主要メディアに『ムーラン』の報道を控えるよう命じた。

『ムーラン』はネット上ですでに海賊版が出回っており、11日の劇場封切り前に、中国の大手映画レビューサイト「豆弁(Douban)」には7万6000件を超えるレビューが寄せられていた。大半が冷ややかな反応で、評価の平均値は10点満点中の4.7。ちなみに、1998年のアニメ版『ムーラン』は7.8の評価をたたき出していた。

(執筆:Brooks Barnes記者、Amy Qin記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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