「東大生を見世物にしてあざ笑う」TV局の軽率 コミュ障、変人、アスペいじりはもう要らない

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そのため、東大も学内に「コミュニケーション・サポートルーム」なる支援室を設置し、東大生の発達障害に関わる悩みの相談に応じている。

おそらくアスペルガー症候群の特性と膨大な量の暗記を要求する東大入試との相性がいいのだろう。アスペルガー症候群の人は興味を持つ事柄に対して尋常ならざる集中力を発揮して取り組む傾向にあるし、反復して脳に刷り込むことで覚える「単純記憶」も得意だ。

僕たちは幼少時から、ポケモンの名前なんて全種類言えて当たり前だったし、動植物の種名や天体の名称、電車や自動車の車種など強い興味を持った物事はすっかり記憶することができた。その興味のベクトルが教科書や受験参考書に向けば、入試で点がとれてしまうのも道理だ。

「後の人生できっと汚点になりますよ」

「さんまの東大方程式」の出演者がアスペルガー症候群かどうかはわからないが、仮にそうだったとすれば、ズレた受け答えをしたり、挙動不審になったりしているさまをみんなで笑うというのは人として最低の所業だ。

『東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話』(飛鳥新社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

そういう笑いを番組制作者や世間の人たちが求めているのかもしれないが、ひな壇に並んでいる東大生たちが番組の「いじり」で慌てふためくさまを見るにつけて、僕には後輩たちがひどい「いじめ」を受けているように感じられてならなかった。いじられている彼らは笑顔こそ浮かべていたが、その笑みのなかには卑屈さが見えるような気がした。

吉岡くんは言った。

「現役の学生たちはまだ若いからわからないのかもしれないですけれど……芸能界で生きていこうというのならいざ知らず、あんな番組に出演して、テレビ的に誇張されたキャラクターと実名とをセットで全国にさらしたことは、後の人生できっと汚点になりますよ」

僕もその意見には強く同意する。

池田 渓 ライター

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いけだ けい / Kei Ikeda

1982年兵庫県生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程中退。フリーランスの書籍ライター。共同事務所「スタジオ大四畳半」在籍。

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