中国に帰る「神戸のパンダ」25年の劇的な半生 飼育員は赤ちゃんを失ったタンタンを支えた

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死因は、母乳を飲めなかったことによる衰弱だ。赤ちゃんパンダの死因に多いものの、人の手でタンタンから搾乳して、赤ちゃんに吸わせることができていれば、助かった可能性もある。ただ、それには豊富な経験と技術が必要だ。しかも当時使っていたケージは、すき間から手を入れて搾乳できる構造ではなかった。猛獣であるパンダと同じ空間に入る必要があり、日本人には非常に難しい。

実は、赤ちゃんパンダの出産と育児には、パンダのふるさと、中国からの飼育員の手助けを受けることが多い。東京の上野動物園で2017年にシャンシャン(香香)が生まれたときも、和歌山県のアドベンチャーワールドで2018年に彩浜(さいひん)が生まれたときも、中国人スタッフが大きな助けになった。

だが、タンタンが出産したとき、中国人スタッフはいなかったのだ。同年5月に発生した四川大地震の対応に追われ、来日できなかった。スタッフの派遣元であり、タンタンの生まれ故郷でもある四川省の臥龍(がりゅう)は震源に近く、大きな被害を受けていた。

死んだ赤ちゃんの代わりにニンジンを抱っこ

赤ちゃんの死後、タンタンはニンジンを抱っこするようになった。しばらく抱いて、食べずにペロペロとなめているので、ニンジンは生温かくなる。「ニンジンを赤ちゃんだと思っているのだろう。この子からしたら、死んだなんて理解できんから」(梅元さん)。ニンジンだけでなく、外に出て小石を抱くこともある。筆者が今年9月15日に見たときは、細くて短い竹を抱きしめていた。

こうした育児用の行動、つまり偽育児をするパンダは珍しい。タンタンは偽育児を毎年するわけではなく、基本的に発情した年に偽妊娠と偽育児をする。今年は偽育児を7月下旬から少しずつ始めた。9月に入り抱く時間が増え、多い日は、合計で6時間ほど抱いたこともある。偽育児の間、タンタンはあまり動かない。寝室から出なくて、非公開になったこともある。

王子動物園はコロナ対策で入場を制限しており、タンタンの観覧は予約による抽選制で1人当たり1日1回、2~3分だけ。その貴重な時間にモニター越しに観覧することになった人もわずかにいた。なお、9月28日からは、平日なら予約せずに観覧できる。

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