英語ができれば増える“輸出量”
安河内:すばらしい考えですね。2020年のオリンピックが東京で開催されることで、この国の英語教育に何か変化が生まれてくるでしょうか?
ソレイシィ:試験が変わらなければ、オリンピックが来るという理由だけでは、大きな変化は望めないと思います。スピーキングテストが普及し、オリンピックがいい刺激、きっかけになれば最高ですね。
私が望むのは、スピーキングでもライティングテストでもどちらでもいいのですが、とにかくproductiveなテストがどんどん普及するようにということです。リスニングとリーディングという受け身のテストだけが行われ、パズルのピースを埋めることのみに必死になる世界から、脱却するといいなと考えています。
たぶん、スピーキングテストが普及すれば、日本で英語がもっと普通に使われるようになるのではないでしょうか。メジャーリーグに行って活躍する野球選手も通訳を介さず、もっと自分でコミュニケーションが取れるようになるかもしれません。選手だけではなく、監督までメジャーに“輸出”されることもあるかもしれませんよね。
世界で、今まで日本がなしえなかった役割を果たすことだってできるでしょう。たとえば、今、日本で土木工事の仕事に就いている人は、英語はそんなに必要ないと考えるかもしれませんが、日本の夜間工事のノウハウなどを携えて海外に進出すれば、活躍の可能性があると思うんですよ。日本が国際的に寄与できるチャンスのある分野は限りなくあるでしょう。
スピーキング、ライティングといったproductiveなテストが浸透した暁には、日本のあらゆる分野で、輸入だけでなく輸出ができるようになるのです。
安河内:発信する英語力さえあれば、日本が誇る技術力や知識をもっと世界に広められるということですよね。
スピーキングテストの必要性を説いてくださってありがとうございます。私はTOEICスピーキングテストを強力にプッシュしているのですが、誰もが賛同してくれているというわけではないんですよ。
ソレイシィ:本当に?
安河内:大いに賛同してくれる人も中にはいるのですが、スピーキングテストに積極的じゃない皆さんもけっこういるのです。意外に、現TOEIC対策業界のみなさんの腰が引けているようにも思えます。
ソレイシィ:そうですか。TOEIC産業は一大ビジネスですから、動きが取れないのかもしれないですね。
安河内:リスニング、リーディングからスピーキングに行くと、今できているビジネスベースが壊れるのではないかと危惧する人もいるようなのです。
でも、今日、すごくうれしかったのは、ソレイシィ先生が「スピーキングテスト、みな兄弟」と言ってくれたことですね。どのスピーキングテストもよいところがあれば悪いところもあるけれど、まずはスピーキングテスト自体を普及させていくことが大事。その過程で、よいものと悪いものが選別されていくんですよね。
ソレイシィ:はい。そのカギは、私の考えでは、スピーキングテスト自体がよりpractical(実用的)になることです。TOEICのペーパーテストは今、日本の物差しと言って過言ではないわけですが、TOEICが変わっていくことで、大きな波及効果が期待できる。1社が始めることで変えることができるのですよ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら